開催の御礼:第11回地杉の集いシンポジウム | 屋久島大屋根の会Blog

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1993年に世界自然遺産に登録された屋久島。
島の自然の豊かさにに学び、島ならではの産業を目ざしています。

 初夏の気配を感じ始めながらも寒暖の変化が激しく、気力を要しております。皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしでしょうか。本日は、先日4月8日(金)に行われた、第11回地杉の集いのシンポジウムについて、ご報告をさせて頂きます。

会場タイトル


屋久島環境文化村センターの大型映像ホールを会場にお借りして、18時より開演。屋久島くすのきガレージの内室さんと、YAKUSHIMABASEの竹之内さんが司会を進め、はじめに、今回の実行委員長である(株)やわら香の堀内代表より、開催の挨拶をさせて頂きました。

実行委員挨拶

屋久島の新庁舎が地域材で建設されることが決まり、私たち自身がそれぞれに今できることを改めて考えなおす機会ではないかと考えています。新庁舎は役場の建物ですが、街づくりは役場職員任せでは発展し得ません。私たちの一人ひとりの声を主張して、行動し続けることこそが、街づくり、地域御輿につながっていくと考えます。本日は、是非皆さんと一緒に、新庁舎建設が成功した先に見えるものをテーマに、将来の屋久島について考える時間になればと思います。と語った堀内直哉氏。

実行委員長挨拶


続いて、地方創生担当大臣、衆議院委員、石破茂大臣より頂いたお手紙を披露させて頂きました。お手紙を頂いた経緯は、今回の催しにご招待のお手紙を出したことがきっかけでした。以下、本文のまま公開させていただきます。

 第11回地杉の集いシンポジウムの開催に寄せて

 本日、「第11回地杉の集いシンポジウム」が盛大に開催されますことを、心よりお慶び申し上げます。

 現在私が担当している地方創生とは、人口減少を克服し、それぞれの地域が成長する活力を取り戻すことを目的としています。
 このためには、国土の約7割を占め、現在本格的な利用期を迎えている我が国の森林、そして林業に、そのもてる潜在力を最大限に発揮していただくことが必要不可欠だと考えております。
 特に屋久島においては、森林が全土の約9割を占めると伺っており、林業こそが確信となるべき存在です。

 屋久島には「屋久杉」というブランドが存在しますが、これを中心として「経済の地域循環を図っていく」という考え方は、まさに地方創生に不可欠の視点であり、皆さまのこれからの取組みに強く期待しております。

 ここにお集まりの皆さまの取組みにより、世界自然遺産にも登録された屋久島において、林業がさらに発展し、多くの次世代の担い手が生まれていくことをご期待申し上げ、また政府もやる気に溢れた地域とともに未来をもってつくっていくべく努力をしてまいりますことを申し上げまして、ご挨拶といたします。

 平成28年4月8日
             内閣府特命担当大臣(地方創生)
                まち・ひと・しごと創生担当
                   衆議院議員 石破 茂


基調講演


石破大臣からのお手紙拝読後、基調講演の講師としてご参加を頂いた鎌田道隆先生をご紹介しながら、ご登壇頂きました。

始めに、屋久島町の新庁舎建設の各集落の役割について、建設検討委員会をお務めになられる立場として、江戸時代には幕府も薩摩藩も欲しがるほどの豊かで高い価値のある木材資源がこの屋久島にはあり、それらを今度は屋久島町のためにふんだんにつかい新庁舎建設の準備が進められていることに触れ、島文化の象徴である各集落の自立を集結する役割を果たせる機能が期待できると語られました。

また、全国的にも豊かな日本の森林文化の盛衰についても、都市建設の度に森の木が伐られそして植林されるというサイクルを繰り返してきたことを比較し、屋久島は以前は里山にも屋久杉が植生していたが、伐りつくされた可能性があり、奥山の屋久杉伐採は江戸時代頃から着手されたこと。また、山林での木材伐採が進行するにつれ森林が荒れたことが原因で、土砂崩れによる河川の洪水などが起こり始めるとそれを防ぐために、御留山と称し、植林や林づくりが行われたことをご口授くださいました。

続いて、そのような時代の流れの中で生まれた屋久島の独自の山の信仰についてのお話につづき、海岸を生活の場として集落をつくり、海の恵みで生きてきた島民は、特に漁民は海の豊かさは山の豊かさであるという事を深く知っていた。また、先祖は山の神になるという信仰をもち、集落の里山へ年に2回参拝する「岳参り」は、集落の海岸の砂を摂り、里山の祠にお酒やお米などと一緒にお供えするという意味深い内容で今でも行われている。さらに、屋久島に生まれ高校を卒業するまでの間、島で育った先生ご自身の体験を交えながら季節ごとに摂れる山菜や野生の果物を家族で集めて夕食にしたりおやつにしたり、大潮の日には食せる貝類をとったり磯遊びをしたり、魚釣りは海岸の瀬岩はもちろん、立ち泳ぎをしながらでも釣れ、飛魚漁業、鯖釣り、鰹漁などで屋久島の経済が潤った時代のお話を伺い、会場の皆さんもその情景を想像することができたと思います。また、屋久島の杉が歴史の中で島外からも需要があり、中国でも古い時代に既に屋久杉が渡っていることや、昔のポルトガル語の辞書にも「ヤクイタ」と表記されているものが見つかり、屋久杉でつくられた屋根用の板材として重宝され、世界自然遺産登録の名にふさわしく、私たちの島にはまさに世界に誇れる森林資源や歴史があるのだということを再認識できる時間になりました。

先生の子供時代の植林についても、時には、奥山の屋久杉の苗や穂を分けてもらってまずは畑に植えそれから里山に植林したと語っておられました。杉山の下払いは雑草と蜂との闘いで大変だったと話されています。家山で育った木は、各集落ごとにあった製材所で製材してもらい、自宅の床下や屋根裏に貯蓄し、補修や増築のために備えたそうです。経済は貧しくも、心豊か豊かな時代を振り返ると、今直面している屋久島の森林問題の解決の糸口や青写真のままの山林経済にとって、より持続可能な地域経済のためのビジョンにつながるヒントをたくさん頂けた鎌田先生のご講義ではなかったかと存じております。
 

パネディス



続いての公開討論会では、これまでにも地杉の性質について協力的に研究データを提供して頂いている東京大学名誉教授・谷田貝光克先生と、九州大学院准教授・清水邦義先生、そして町の製材所である工房屋久島の兵頭昌明さんに、「新庁舎建設の先に見えるもの」をテーマに、屋久島の未来と持続的地域活性化について、屋久島が果たすことができる先進的役割と、屋久島の木材産業の「自立と流通」を図るうえで先生方から頂く専門分野における知識とメッセージを会場の皆さんとシェアできる機会として会場進行をさせて頂きました。

パネリスト①

谷田貝先生からは、再生可能な森林資源の活用は、公益機能や多目的価値を再確認しながら、地域の森林文化を継承していくべきというというお考えを伺いました。また、ドイツの林業について関わりがある先生、そこでは林業教育が小学生から根付いており、国内でも尊敬される職業に位置付けされるほど、林業が盛んであるというコメントが印象的でした。

鎌田先生からは、山を大切にすることは海を大切にするという教育のある屋久島づくりが今後大事になるのではないか、また、持続可能な林業に関しては、植林された杉は山主との信頼関係があるオーナーを島内外から募集するような制度も面白いですね、との提言を頂きました。

パネリスト②

清水先生からは、屋久島産地杉の付加価値を高めるために、他のものと明らかに違うという価値づくりが林業発展につながってくるのではないか、木材の機能性(生理活性)に関する研究から、データをとっても屋久島の杉の人体的作用は著しいものがあり、屋久島に生活されている方は、豊富な自然と資源に囲まれて大変に豊かで羨ましく思います。という事を熱く語っていただきました。

また、兵頭さんが語られた人工杉の長伐期の検討や、温暖化に対する屋久島の森林評価についての再認識するべき内容は、アンケート集計の結果わかったことですが、会場の皆さんに多く同意を得るものになりました。さらに、今回の庁舎建設においては、地域木材を活用した記念建設物をつくるのだから、島人の志と建設に係るプロセスが大事であるとのお考えをお話頂きました。

 パネルディスカッションにて 
プログラムはいよいよ最後になり、会場より頂いた質疑応答の際には、パネリストへの専門的な質問が積極的に挙がりました。林業関係者による森林整備についての質問や、森林資源生産者からの今の屋久島の産業に必要なもの、ことについて、またさらには学校教育への囲碁の導入を提案してい方による囲碁大会を屋久島で開催し、全国各地、世界各地から島に人を集めて地域の活性化につなげること、碁盤を地杉でつくり製品化してほしいとの提案もいただくなど、パネリストと会場の距離が時間を経るにつれ近くなったことを感じることができたと同時に、今回の第11回地杉の集いシンポジウムの成功を確信しました。

碁盤を地杉で!
 
最後になりましたが、今回実行委員として関わっていただいた皆さんをはじめ、共催、後援を賜りました皆さまに心よりお礼を申し上げ、御礼とご報告とさせていただきます。