こんにちは、みゆです☺️

大阪に住んでた頃、休みの日にわざわざ出かけてた場所のひとつが北加賀屋(きたかがや)でした。四つ橋線に乗って住之江の方へ。駅を出ても、正直なにもない町工場と住宅の街なんです。でも歩いていくと、壁にいきなり巨大な絵が現れる。錆びたシャッターの隣にゆるいキャラクターが並んでて、その先には「名村造船」の古い看板。あの「働く街に絵が住みついてる」感じが好きで、季節ごとに歩きに行ってました。
で、本帰国したいまのわたしは、あれと同じ胸の高鳴りを文来洞(ムルレドン)で感じてます。今日はその話です。

写真:夜の文来洞の路地。昼は鉄工所の顔をしてる通りが、日が落ちるとこの表情になります(撮影 lazy fri13th/ウィキメディア・コモンズ・CC BY 2.0)

◆ 北加賀屋という街のこと

北加賀屋は木津川の河口近く、もともと名村造船所の企業城下町でした。船がどんどん大きくなって川で進水させるのが難しくなり、造船所は移転。残ったのは広大な跡地と、仕事を失った街です。
ここからが面白くて、この一帯の土地を持つ会社が、跡地を潰して再開発する代わりにアートイベントを開いたり、空き工場や空き家をアーティストに貸し出したりしたんです。造船所跡はクリエイティブセンター大阪という巨大なイベント空間になって、街のあちこちに壁画と作品が増えていって、いつの間にか「アートの街」と呼ばれるようになりました。
わたしが通ってた頃も、ドックの跡でやる夜のイベントは天井が高いどころの話じゃなくて、「船を作ってた場所のスケールで遊ぶ」っていう贅沢さでした。

写真:北加賀屋のクリエイティブセンター大阪。錆びた「名村造船」の看板の下に、あの壁画たちが並んでます(撮影 聖石大戦ぶぅぶぅ/ウィキメディア・コモンズ・CC BY-SA 4.0)

写真:造船所跡のスタジオパルティッタの夜イベント。工場のスケール感のまま遊ぶのが北加賀屋流でした(撮影 Karl Baron/ウィキメディア・コモンズ・CC BY 2.0)

◆ ソウルにもあったんです、「働く街のアート」

ソウルの地下鉄2号線・文来駅の周りには、小さな鉄工所が路地にぎっしり並ぶ一角があります。地元では「鉄工所通り」なんて呼ばれてきた、金属加工の職人さんたちの街。もともとは砂の多い村で「モレンマル(砂の村)」と呼ばれてたのが、いまの「文来」って名前のルーツだそうです。
2000年代に入って、この鉄工所街の2階や空きスペースに、家賃の安さを頼りに若いアーティストたちが少しずつ入ってきました。それがいまの文来創作村(ムルレチャンジャクチョン)。路地には鉄で作った彫刻やグラフィティが増えて、鉄工所の間にカフェやギャラリーが挟まってる、ソウルでもかなり変わった風景になってます。

ただ、北加賀屋と決定的に違うところがひとつあって。北加賀屋は船が出ていったあとの街にアートが入ったんですが、文来洞は鉄工所がいまも現役で働いてる真横に、アートが同居してるんです。昼に歩くと、火花とグラインダーの音と機械油の匂いの中を歩くことになります。わたしは最初、ちょっとひるみました。でもそれが本物なんですよね。

写真:昼間の文来洞の鉄工所通り。奥にそびえる高層ビルとの落差が、この街の現在地です(撮影 Motoko C. K./ウィキメディア・コモンズ・CC BY-SA 3.0)

◆ 歩くなら、昼と夜で別の街です

昼の文来洞は職人さんの時間。シャッターが全部開いて、鉄を切る音が路地に響いてます。壁画や鉄の彫刻を探しながら歩くのは楽しいけど、ここは観光施設じゃなくて現役の仕事場。作業場の中にカメラを向けたり、入り口を塞いで写真を撮ったりは絶対ナシです。働いてる人が最優先。
日が落ちるとシャッターが下りて、今度は路地のあちこちにカフェやお店の灯りがともります。鉄工所の建物をそのまま使った店が多いから、天井は配管むき出し、壁は塗装そのまま。冒頭の写真の雰囲気は、この時間帯のものです。
週末は鉄工所がお休みなので、音は静か。壁画をゆっくり撮りたい人は週末の昼、街の体温を感じたい人は平日、夜ごはん目当てなら金曜の夜。同じ路地なのに、三つの顔があります。

写真:文来洞の全景。低い工場の屋根の海を、新しいビルが取り囲んでます(撮影 Minseong Kim/ウィキメディア・コモンズ・CC BY-SA 4.0)

◆ 正直メモ

いいことばかり書くのはフェアじゃないので、正直に。まず、「映えスポット」を期待して行くと戸惑うと思います。ここは聖水洞(前に書いた、中崎町に似てるあの街)みたいに整った店が並ぶエリアじゃなくて、良くも悪くもまだ工場街です。汚れてもいい靴で行ってください。
それから、この一帯は再開発や工場の移転の話がずっと動いてる場所でもあります。職人さんの街とアートの共存がこの先どうなるかは、正直誰にも分かりません。北加賀屋が「造船所が出ていったあと」の物語なら、文来洞はまさにいま、その分かれ道に立ってる街。数年後には見られないかもしれない風景だと思うと、わたしは「行くならいま」だと思ってます。

◆ アクセス

地下鉄2号線の文来駅からすぐ。ホンデ(弘大入口)から2号線で数駅なので、ホンデ観光と同じ日に組み合わせやすいです。永登浦のタイムズスクエア(巨大モール)も歩ける距離なので、買い物とセットにするのもアリ。ソウル中心部からのアクセスの良さでいうと、「こんなに近くにこんな風景が残ってるの?」って驚くレベルです。

▼路地の雰囲気はこの動画がいちばん伝わります。鉄工所とアートの距離感、ほんとにこのままです🔧

◆ ふたつの街が同じ理由

船が出ていった街に絵が咲いた北加賀屋と、鉄がまだ働いてる横で絵が育ってる文来洞。順番は逆だけど、どちらも労働の風景を消さずに、その上にアートを足した街です。ピカピカに塗り替えるんじゃなくて、錆も油の匂いも込みで愛する。わたしが大阪で好きだったものが、ソウルにもちゃんとありました。
ソウル旅行で「きれいな場所はもう見た」って人にこそ、半日だけ文来洞へ。あなたの街の「働く街のアート」も、よかったら教えてください☺️

※写真は実写です(出典:ウィキメディア・コモンズ、各キャプションに撮影者とライセンスを記載)。お店や街の様子は変わることがあるので、最新の情報をご確認くださいね。

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