文字数:1697文字(原稿用紙約4枚強)

 

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前回は遠洋マグロ漁船に乗っている人達について、私が見てきて思う事を書きましたが、今回はその続きを書きたいと思います。

 

3.幹部船員は漁師であり管理職。

 

遠洋マグロ船に乗っている人達は漁師ですが、1隻に20人前後ずつ乗っている船は会社でいえば1つの部署や支店、工場であり、幹部船員は魚を獲るだけではすみません。

 

船長だった父も例外ではなく、3日に1回の延縄を仕掛ける投縄当番はもちろん、船員総出で行う揚げ縄作業に従事するだけでなく、船の安全運行に関する全責任を負いますし、外国の港をはじめとして入出港時にはその手続き、入港した場合の入港金の支給をはじめとしたお金の管理、船員の雇い入れや雇い止めの手続き、船員間の問題が起こった場合の対処(状況によっては強制下船させますし、実際そうした措置をとった事があったようです)など、事務的な仕事も多くあります。

 

父から色々と話を聞かされ続けた中で、私が思ったのは船長は会社でいえば総務課長のようなものだと思いましたが、父にそれを聞いてみるとその通りとの事で、中間管理職という側面もあると言えるかと思います。

 

魚を獲る事に全責任を負う漁労長は船員たちにとっては絶対的な存在であり、会社でいえば部長や支店長といった立場になるかと思いますが、魚を獲らなくてはいけないプレッシャーと戦い続ける一方で船内の輪を保つよう努めなくてはなりませんし、魚を獲れない事が船員の輪が乱れる事にも繋がりますから、とても神経を使うと聞いています。

 

今は違うと思いますが、私の住む地域の遠洋マグロ船では船員集めが漁労長の仕事だった時があり、船長を探している漁労長から父に直接電話がかかってきた事もありました。

 

それは船にインドネシア人が多く乗り組むようになってから変わったのではないかと思いますが、航海を終えて帰港しても下船者が発生すれば漁労長は船員集めをしなくてはならず、せっかくの休暇も船員探しでパチンコ店や飲み屋、船具屋さんといった船員が出入りする所を歩き回り、時には乗船してもらうためにお金を渡す事もあったと聞いていますが、船員を確保するには交渉力や営業力も問われる事になります。

 

下船者が多い船は船内がうまくいっていないか、稼ぎにならない船かではないかと思いますが、魚を獲った上でリーダーシップをいかに発揮し続けられるかが漁労長の力量であると言えるかと思いますし、それは陸上の仕事でも問われる事であり、漁労長として成功できる人は、陸上での仕事でも結果を出せるビジネスマンではないかと思います。

 

 

 

※上の写真は出港時に挨拶をする漁労長。長年海上で生活してきた漁師とは思えないほど立派な挨拶でした。

 

4.漁師は信心深い。

 

大胆で豪快なイメージがある遠洋マグロ船の漁師ですが、その一方で自然を相手にする事もあって、陸上で生活している人達以上に信心深いようには感じます。

 

今はなくなったのかもしれませんが、船の神様は女性という事で女性が船に乗る事はご法度で、ちょっとした事でも船に女性は乗せなかったという事は聞きますし、女性が船に乗る事を嫌う人は多かったと思います。

 

船を預かり、魚を獲る事に全責任を負う漁労長さんは特に信心深いように思いますが、出港の前には神主さんが船で航海安全と大漁祈願のご祈祷をしますし、私が育った家にも漁労長さんが出漁の度にご祈祷にいらっしゃっていました。

 

 

また、船には神棚もありますが、魚を獲る事についての経験や腕があっても、自分の力だけではどうにもできないものがある事を感じるからこそ縁起が悪い事は嫌い、神様にもすがりたくなるのだろうと思います。

 

 

他にも遠洋マグロ漁船に乗っている人達について、私が見てきて思う事はあったと思いますが、次回からは私の父がどんな航海をしてきたのか、留守家族である私はどんな想いで過ごしてきたのかを書く事を通して、都度書いていきたいと思います。

 

つづく

 

分かりにくい点もあったかと思いますが、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。