「高校を出て、これまで最高に働けたのは一年半でした。それからは、何か職を転々として、なんだか続かないんですよねぇ。職場の仲間も嫌な人ばっかりでしたし…」
「あ~そうですか、一年半が最高ですか…、でも、あ!、そうだ、お名前を伺っていませんでしたね。お名前は…」
「Yと言います。」
「あ~、Yさん。ちょっと良いですか、伺っていて思ったんですけれど、まず、Yさんは色々と悩んでおられますが、まず、こうしてわざわざ教会に来て、お話しをされるってことは、まだまだ自分は諦めていないって事でしょう。諦めている人は相談なんかこないものですよ。」
「え~、まあ」
「いや、わたしはそう思います。大体教会のチャイムを鳴らして、牧師に相談しようとするその姿がまだまだこれから頑張ろうと思っていないと、なかなか出来ないことなんですよ。なんとかしたいと思っているから、ここまで来られたということじゅないですか。」
「そうですね~」
「そうですよ。そして、これからの自分の将来についても、悩んでおられる。悩んでいるってことは、なんとかしたいって思いがあるって事でしょう。だから、必ず、Yさんの将来はね、明るいと思いますよ。だって、これだけの行動をすることが出来るんですから」
「う~ん。そうかな~?」
「いや、わたしはそう思います。高校卒業して今、26歳っておっしゃったでしょう。その中で、何回も職を変えたっていうことは、この仕事は自分に向いていないってことが分かったということです。
だから、新しい職場にチャレンジしようとしているわけだから、こんどは、自分にあった職場に就職して、Yさんなんの仕事が必ず出来ると、私は思いますよ。」
「そうでしょうか?」
「そうですよ。人は、最初からこの仕事と思って、挫折しなかった人の方が少ないと思います。
その中で少しずつ、自分の個性や、自分を知りながら、最も相応しい働き場が与えられていくものだと思うんです。だから、全然、まだまだ、大丈夫。
次の職場はねぇ…、そんなに急いで探さなくても、御自宅におられるんだし、じっくり、ゆっくり探して、これっと思ったらそこに集中して頑張ろうって思うぐらいでいいんじゃないですか。
何も急ぐことなんかないんだから、そうやっていくうちに、きっと素敵な彼女も見つかって来ますから。大丈夫ですよ。」
「そうですかねぇ、そうですね、なんだか、だんだん、私もそんな気がして来ました。来てよかったです。ありがとうございました。」
「いえいえ、どう致しまして、また、是非、お出で下さいね。いつでも待っていますからね」
そう言って、Yさんは自分の家に帰って行きました。
さて、「なぜ人は立ち直れるのか」第2回は、私の言葉に注目してください。
1、叱らない。
2、誉める。
3、励ます。etc…。
Yさんが家に帰って、母親と話す会話が聞こえてきそうです。
「どうしてお前は、仕事もせずにダラダラ生活しているの、いい年して、ちゃんと仕事を見つけなさい。うちだって大変なんだから」
「また、仕事辞めてきたの、全くあんたは辛抱が出来ないんだね、みっともない」
あるいは「わたしゃ、恥ずかしいよ」
恐らく一つも励ましの言葉、誉めるような言葉、慰めの言葉でもって、会話が成立していないようなそんな感じがしませんか。
自分でも「ダメな自分」と思っているのに、更にそれを確認するように周囲から「ダメなあなた」という言葉のシャワーでは、どんなに優秀な才能を秘めた人であっても、どんどん「ダメ」なスパイラルに入っていくのではないでしょうか。
人は、「言葉」によって、元気が出たり、がっかりしたり、気持が通じ合ったり、離れたりするものです。
そのことを敏感に感じる必要があるのです。みなさんは、自分の友だち、お父さん、お母さん、兄弟に、「元気の出る言葉」、「素敵な言葉」をプレゼントしていますか?