なぜ、人は立ち直れるのか Ⅰ
ある時、知らない青年が教会を訪ねて来ました。
「こんにちは、お話があるんですけれど…」
「こんには、よくいらっしゃいました。どうしましたか?」
「実は、僕、困っているんです。」
「あら、困っているんですか」
「はい、彼女が出来なくて、なんか同級生とか、結婚し始めているし、僕だけ取り残されているような気がして、ちょっと滅入ってしまって」
「あら、ちょっと滅入っているんですか。今、何歳なんですか?」
「もう26歳になりました。」
(心の声)
(え~、僕なんて30歳まで結婚なんて考えたことなかったし、結婚したの35歳だし…)
「あ~26歳ですか。」
「そうなんです。なんだか僕の人生って失敗ばっかりで、仕事も探しても無くて、今も仕事がありませんし、彼女もいないし…。どうしようって悩んでいたら、教会の看板に、どんな方でもどうぞって書かれてあったものですから…」
「あ~確かにどんな方でもどうぞって書きました。」
「ハイ、ですから、相談出来るかなぁって思って思いきってチャイムを鳴らしたんです。」
「そうですか、チャイムを鳴らすのはとっても勇気がいったでしょう?」
「いえ、そうでもないですけれど…でも、友だちともこんな話しは出来ませんし…」
「友だちとこんな話しは出来ませんよねぇ」
「そうなんです。バカにされてしまいますからね、ここなら安心かなって思って」
「ハイ、ここなら安心ですよ。それで…」
「え~、今、なんとか仕事を探しているんですが、中々不況で雇ってくれるところが無くて…」
「不況ですもんね~」
「そうなんです。それで彼女も出来ないし、仕事も無くて、母親からは叱られてばっかりりで…」
「そうですか。お母さんから叱られてばっかりで、そりゃ大変ですね」
「そうなんです。家にいると母親がうるさくて、父親は病気で寝ていますし…」
「あら、お父さんは病気なんですか。」
「はい、でも母親が美容院をしているので、それでなんとか生活は大丈夫なんですけれど、でも僕もいい年して、仕事も無くて… 困ってしまいました。」
「困りましたねぇ…」
(心の声)
(俺が26の時なんか、車買って借金だらけで、体の具合も悪いのに、がむしゃらに働いて、ぶっ倒れたことあったな~)
さて、なぜ「人は立ち直れるのか」の一回目です。青年が教会を訪ねて来ました。相談ごとです。読めばわかりますね。でも気を付けて読んでみて下さい。私の返事は「青年の言葉」をただ、繰り返し、繰り返し、同じ言葉を返しているだけです。ここがポイントです。
どうしてか? 青年はとっても良く聞いて貰っているという思いの中で、安心しながら話しています。話しながら、聞かなくてもどんどん状況を説明しています。
初回は「この人なら、自分の気持ちを分かって貰えるのではないか」と思ってもらったら成功です。