ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、(マタイによる福音書2章14節)


 この出来事は夜の出来事です。「ヨセフの夢」に主の天使が現れて、エジプトに逃げるようにと告げるのです。


 ヘロデ王が幼子イエスを殺す段取りを既に取って、スタンバイしているのです。一刻の猶予もありません。

 

 驚いたヨセフは、すぐに起きて、妻のマリアに夢の言葉を告げ、エジプト逃避への説明をしたことでしょう。マリアの驚きも容易に想像出来ます。

 

 どんなにか、驚き、また、急いだことでしょう、ヘロデは、幼子1人を殺してしまうことなど、なんとも思っていなかったでしょう。


 ヨセフ家族にとって極めて緊急事態なのです。

 

 夢を見た、数時間後、まだ、日の出前に、エジプトへと向かった事でしょう。


 ベツレヘムからエジプトへ、当時のエジプトは、女王クレオパトラが紀元前30年に、ローマのオクタビアヌスとの戦いで敗北し、コブラの毒で自害したと言われていますが、その後はローマの直轄地になっていた状態でした。


ですから、彼らがエジプトへ向かうことは、ローマ帝国内ということで、とりあえずは大きな困難は無かったかもしれません。また、ヘロデの手から逃れるということからすれば、適した土地であったかもしれません。


とはいえ、その旅は、どれほど大変であったことであろうかと思います。


実際は夜逃げ同然の旅です。旅と言えば、何か素敵ですが、現代でいえば、「難民」と言う言葉が一番相応しかもしれません。


それ故でしょうか。多くの画家が、「聖家族のエジプト逃避」を絵画の対象として記しています。


今年の7月頃、上野の西洋美術館で、私の好きなレンブラント展がありました。見に行って来ましたが、レンブラントは思いの他、多くの「エジプト逃避」を題材にしておりました。


どうして、こんなにも多くの作品をこの場面に求めたのであろうか、と不思議に感じて帰ってきたことを思い出します。


日本においては、この「聖家族のエジプト逃避」は、何かクリスマスに相応しく無いような思いがあり、特に世間のクリスマスに取り上げられることはまず100%無いと言っても良いでしょう。


クリスマス商戦では、エジプト逃避の物語など、全く必要では無いのでしょう。

けれど、古来から、この物語は、多くの絵画で描かれ、語り告げられ、キリスト教国においては、クリスマスの物語と切り離すことは出来ない出来事として取り上げられているのではないでしょうか。


そして、この出来事もまた、実は旧約聖書の預言の言葉が成就するためだったのです。


それは、また、次回へ続く。


「エジプト逃避の絵画」


ゴフレード・ファルス(1595-1638/40) 

http://collection.nmwa.go.jp/P.1994-0002.html  国立西洋美術館


ヤン・ステーン(1665-68)

http://www.wga.hu/art/p/patenier/land_res.jpg  




西洋絵画ナビ(ここでは多くの画家がエジプト逃避の場面を記しています。)

http://art-yes-art.com/bible/flight_into_egypt.html




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