(第一章から続いてます)
そのうち、大人になった鳥たちに初めての「虹の担い手」となる日がやってきました。
皆で光の色を出して、大空に虹を描く虹の担い手となる日です。
この「天の涙」が上がったら、皆で行くぞ。
レッドが言います。
虹の鳥たちは、雨のことをそう呼んでいるのです。
きっとうまくいくわ、とパープルが静かにささやき、
イエローは楽しげに笑いました。
グリーンは深呼吸し、オレンジはやる気満々で翼をばたばたとさせました。
ブルーは深くうなずき、インディゴは静かに目を閉じて時を待ちました。
育みの樹がふるふると葉を揺らします。
ワン、トゥー、スリー!
一斉に飛び立つ虹の鳥の兄弟たち。
7羽で綺麗に一列になって、空に弧を描きます。
鳥たちが飛んだあとには、それぞれの光が生まれ、
きらきらと光の粒を輝かせながら、大きな虹を作りました。
にぎやかの街に住む人間たちは、その虹を見ていました。
「わぁ、すごいなぁ」と口々に言います。
今日の虹は格別に美しい、と。
街の歓声は、祝福の谷まで届き、鳥たちは互いに喜び合いました。
でもズィップは、、、
一人悲しい気持ちでいました。
ズィップは飛び立たなかったのです。
僕が飛んだらきっと空に墨を落としたようになるんだ。
ズィップは喜び合う兄弟たちを尻目に一人シクシクと泣きました。
どうして僕は生まれたんだろう。何の役にもたたないのに。
そんなズィップに育みの樹は、また優しく光を集めてあげるのでした。
兄弟たちがまた虹を担いに飛び立ったある日。
ズィップは、巣からじっと外を見てまた思っていました。
空を飛ぶってどんな気持ちだろうか。
ズィップは、一度も飛んだことがありませんでした。
兄弟たちの身体から流れる美しい七色を見るたび、
自分の身体から出る真っ黒の色を想像してしまうのです。
でも、、少し飛んでみようか、、
そう思って身体を巣から少し出した途端に、
ズィップは真っ逆さまにすとんと巣から落ちてしまいました。
あまりの驚きで、羽ばたく間もありませんでした。
なぜって、ズィップはこれまで一度も翼を広げたことがないのですから。
ズィップは途方に暮れました。
幸い、育みの樹の下はふっくらとした草が茂っていて、
固い大地からズィップを守ってくれましたが、これでは巣には戻れません。
ズィップは頼りない声をあげて、巣を見上げました。
その時です。
小さな男の子がお母さんに手を引かれてやってくるのが見えました。
(第三章に続きます)