例年になく、暑い夏だった。
熱中症で倒れた人が出たというニュースが連日続いている。
あたしは夏休みだというのに、ぼんやり過ごすことが多かった。
高校に入学する前の想像では、この夏彼氏と思い出作りをしているはずだったのに、実際はベッドで横になっているだけ。
日に焼けることのない真っ白な肌を見るたびに、気持ちはどんどん暗くなる。
あんなに仲良しだった陽菜からはまったく連絡がなく、かといって自分からどうこうする気も起きない。
あたしは昔からそう。
起こっている問題と向き合うことをしない。
そういう生き方しかできないのだと、いつからか諦めることにした。
まだ中学生のころ、こんなことがあった。
クラスの男の子に好きだと告白されたのだ。
あたしはあまり自分の気持ちをひとに話すのは得意じゃないし、ましてや恋愛のこととなるとさらに消極的になり、仲がよい陽菜にすら言い出せずにいた。
けれど実はその彼のことが好きだった。
だから、まさか彼が自分のことを好きだったなんて本当に驚いたし、嬉しかった。
本来ならきっと付き合うんだと思う。
でもあたしは違った。
たまたまその告白を聞いていた仲良しグループの友達たちが、彼のことをけなしたのだ。
不細工とか、気持ちが悪い、とか。
こんな気持ち悪い奴と付き合わないよね?と。
あたしは、怖くなった。
友達に、嫌われたくなかった。
「当たり前だよ。こんなひとと付き合うわけないよ」
それがあたしの答えだった。
わかってる。
あたしは本当に情けなくて勇気のない、弱い人間だ。
そのあとわかったことだけれど、グループ内の女の子のひとりが密かに彼のことが好きだった。
だから、あたしと彼が付き合うことがないように周りが働きかけたのだ。
それを知ったからといって彼に本当の気持ちを言う勇気も、友達に本音を話す勇気もなかった。
ただ、諦めた。
すべての感情を捨てた。
忘れちゃえばいいんだ。
何もなかったことにすればいい。
あんな人、きっと好きじゃない。
そう思い込むことで、周りとうまく付き合う道を選んだ。
今も諦め、逃げている。
きっとずっと逃げ続ける人生なんだと思うと少しだけ泣きたくなる。
今回も諦めることができると思った。いつもみたいに。
それなのに、あたしの気持ちは新のことを諦めようともしないし、忘れようともしない。
会えないことが辛い。
会いたい。
新に、会いたい。
部屋から見上げた空は青く、渦を巻いた雲が浮いている。
新は雨が降らないことをきっと喜んでいる。
彼が幸せならば、それなら、雨なんてずっと降らなくていいのに。
