♦譲れない気持ち(続き) | *.・・Another Sky・・.*

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だいたいは日常のこと、恋のことなどを書いてます

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「新くん・・・」

目の前には、新がいた。新が、立っていた。


「新くんの妹だったの?」

あたしは2人の顔を交互に見比べる。

言われてもわからないくらい彼等は似ていない。


「まさか大川がいるなんて思わなかったよ」

新も驚いているようで目を丸くする。


「あたしもビックリしちゃった。電話の声、わからなかったな」

「俺もわかんなかった」

「しりあい?」と目をパチパチさせるアカリちゃん。

「お兄ちゃんのお友達なんだ」


今まで見たことのない優しい顔で、新がアカリちゃんを抱きかかえた。

胸が苦しくなる。

夕日に染まる新は、世界で一番かっこよくて、世界でいい晩優しいお兄ちゃんなんだと思った。


「アカリ、勝手に抜けてきちゃダメだよ。帰ろうな」

新はアカリちゃんに優しくちゅういすると、あたしに「ありがとう」とお礼を言った。

それからくるりと体の向きを変え、2人で歩き出そうとした。


「待って」

まだ、一緒にいたいよ。


アカリちゃんを真ん中に挟み、あたしたちは3人で夕日に向かって歩いている。

アカりちゃんは一生懸命話し、新はそれを静かに聞いている。

優しい時間が流れる。


いつまでもこのままでいたい気持ちになるけど、現実はそうはさせてくれない。

楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。


新が足を止めたのは一軒家でもマンションでもなくて、可愛らしく飾りのされた四角い建物だった。

入口に小さな門のようなものが立ち、そこには文字の剥げた大きな表札がついている。


「ここは?」

「アカリのお家なの」

「え?」


思わず新を見てしまった。

だって、ここは保育園じゃなくて、

施設だよ。

新は黙ったままアカリちゃんを抱きかかえ、施設内に入っていく。


「アカリちゃ~ん」

中から出てきたのは、以前会った南先生だ。

あたしは軽く会釈して、中には入らず門の前で新を待った。


あたしが踏み込んでいい領域ではないと、そう感じたから。

“家庭の事情で学校に来ない”。彼がそう言われていたことを思い出す。


きっと、他人には触れられたくないことがあるだろう。

人の痛みを理解することはできないから。


あたしには、新の苦しみはわからなかったのかもしれない。

それでも

わかりたいと、

力になりたいと、

ひたすらにそう思った。