新は授業を受けることなく帰っていった。
わざわざあたしのことを気にして来てくれたのだろうか。
なんて・・・都合よく解釈してしまう。
何事もなかったかのように戻ってきたハジメたち。
彼らもそのままカバンを持っていなくなった。
ハジメたちに怯えることのない平穏な生活が戻ってきたのだと思うと、心の底から嬉しくなった。
「あず、話があるんだけど」
休み時間、怖い顔をした玲奈にそういわれた。
きっと新のことだ。
新とあたしのやり取りを、鬼のような顔をして眺めていたことに気づいていた。
「何?」
「ここだとみんないるし、いい?」
みんなの前だと言いにくいことなんだと、心が重くなる。
玲奈は足速にあたしを空き教室に連れてくると、ドアをしめ、人がいないかを確認した。
怖い。
あたしを見つめる彼女の吊り上った目が、怖くてどうにかなりそうだ。
「新とどうなってんの?」
「どうって・・・。何でもないよ。今日はたまたま助けてくれただけなの」
ウソは言っていない。
玲奈が一歩近づく。
あたしは一歩後ずさりする。
「すきなの?新のこと?」
好き・・・?なのかな?
確信はない。だけど、確実に好きになりかけてる。
あたしが黙っていると、玲奈はあたしの足を強く踏んだ。
「痛っ」
足先に、痛みが走る。
「言ったよね?好きだって。取らないでって」
「うん」
「裏切ったら、許さないから」
「裏切らないよ・・・」
あたしがそう答えると、玲奈は吊り上げていた目を元に戻し、今度は目じりを下げて笑った。
「わかってるならいいの」
奪い合いになる恋なら、あたしはいらない。
傷つけ合わなければいけない恋は、ほしくないの。
争いは、起こしたくない。
ただ、あたしは弱かった。
自分の気持ちを真っ直ぐぶつけられるほど、強くはなかった。