夏への・・・といえば、当然ハインラインの『夏への扉』なのだけれども、そのタイトルから分かるように、サイエンス・フィクションもの。

結構いいアニメ映画だった。かなり君の名はを意識している(お互いに相手の名前を連呼するあたり)。

 

うらしまトンネルに入ると、自分が過去に失った大事なものを取り戻すことができる。ただし、その中では時間の流れが速く、数分そこにいただけで外では一週間が経ってしまう。

このトンネルの中で主人公は、幼い頃に亡くなった妹が履いていたサンダルと、二人で飼っていたインコを見つける。今度はもっと奥までいって妹本人を取り戻そう。

その企てに乗ったのが転校生の謎な少女。ところがこの映画のいいところは、謎な少女は実は結構普通な女の子で、平凡に見えた主人公の方が、ちょっといっちゃってるってとこ。自分が特別だと思いたい少女は、本物の奇人を前にすることで、彼と同じ世界に入りたいと思うようになる。こうして、二人が別々のものを求めてトンネルへと挑む共同作戦が始まる。

 

 

いうまでもなく黄泉降りは成功しない。だから黄泉降りで何かを持ち帰ることにゴールはない。その旅の途上で、旅の仲間と得た経験こそが宝なのだ。そういう結果になるだろうことは最初から分かっているのだけれども、なかなかうまくその後も展開していく。

 

妹のことばかり考えて、妹を蘇らせるためには1000年だってトンネルに篭るつもりの主人公。一方のヒロインはダメもとで送ってみた漫画の原稿が評価されて、トンネルに潜って「才能」を発見するという目的を見失っていく。

 10代らしい恋愛(というか人間関係)。ある一人と一緒になるためなら、世界を捨ててもいい。そしてそのいっちゃっている魅力と幼稚さが、紙一重で、少女の方が一歩先に大人になっちゃって、それでも別の世界を見続ける彼のことを忘れないのがとてもいい。