ネットフリックスで、とてもよかった。今年見たアニメ映画では一番だと思う(そんなにたくさん見てないけど)。

1960年ごろから日本全国にできた団地(独立階段、五階建て)って土地に根差しておらず、安普請で、画一的で、無味乾燥・・・そういうイメージが長く続いたと思う。ところが、半世紀も経つと、そこにも長い長い物語が紡がれて、日本人の「ふるさと」を形成する心象風景に組み込まれていく。

 

水没する団地へのノスタルジーというのは実はこの映画オリジナルではない。わりとよく出てくるテーマだ、多分あまりみんなあえて名前を言及しないだけで結構あると思う。

「ペンギンハイウェイ」の会社らしいが、こちらの方がずっとよかった。ペンギンハイウェイって、幻想小説の定義の敷居上でうろちょろするので、すごく居心地が悪いのだが、この映画はそうではない。団地が漂流を開始して以降のことは、集団的な「夢」の一種だということが、わりとはっきりとしていて、その上でその夢の中を生きる限りは彼らには現実なのだ。必ず夢オチというハッピーエンドにたどり着けるはずだという期待があるから、この恐ろしい映画も見ていられる。

 

 この映画の恐ろしさというのは、明白に東日本大震災時の津波を連想させることだ。映画の中盤で、同じように漂流した建物が次々とぶつかってくる場面などは、はっきりと現実の津波の映像をモデルとしていることを思わせる。だから、そういう注意はした方がいいと思う。

 

 物語の主軸としては、「こうすけ」と「なつめ」の恋物語なんだけど、いつまでも失った人、物への愛着にとらわれて、自分までも死後の世界へと引き摺り込まれそうになっていく「なつめ」を、「こうすけ」が救い出す物語といったほうがいいか。彼らは小学六年生という設定だが、この年代だと思いがけないほどに喪失が心に傷を残すのだろうか。

 「なつめ」は団地に囚われていて、それを救い出すためなら自分の命までも軽く扱ってしまう。「こうすけ」はそれがむかついて仕方がない、俺と一緒に戻ろうぜ。でも、こうすけもまた、なつめを救い出すためなら、自分の命を投げ出してしまう。それもまた、こうすけを好きな女の子や、友達たちには許せない(まあ女の子の怒りはなつめに向かうんだけど)。

 なんだかそういうすごく危うくて、繊細な関係性の上に成り立つ、パニック?映画。