例えばこのようなAnalyse de l'œuvreと呼ばれるもの、小説や批評のあらすじや登場人物を解説し、そこで何が問題となっているのか、議論の要点を整理してくれるような概説書がある。僕の留学一年目の夏休みには、大学にも図書館にも行かず、一日中部屋に篭ってこれらの概説書を毎日十冊くらい読み続ける日々を送った。それが可能だったのは、当時は日本のアマゾンにのっているこれらの概説書のほとんど全てがKindleアンリミテッドに登録されており、月額990円で読み放題だったからだ。

 それがいつの間にか、幸いにも僕が全て読み尽くした後に、全てアンリミテッドから外されてしまった。なので、おすすめの勉強法としては紹介できなくなってしまっていた。

 

 ところが、今日ふとアマゾン・フランスの方を見てみると、こちらではabonnementの対象と書いてある。なんだ、こっちでは健在だったのか(以前見た時は外れていたと思う)! なので、もう不要になった日本版のアンリミテッドの契約を解除して、フランス版のabonnementを申し込んだ。月額9.9ユーロだから、1400円するけどしゃあないね。

 まずはブラッドベリの華氏451度やウエルベックの地図と領土の概説を読んだりしたけど、やっぱりこの手の本が一番読みやすいと思う。フランス語初めの一冊としてよくお薦めされるのは、星の王子さまだがその後が難しい。異邦人? アゴタ・クリストフ? でも話を知らない小説って読むのはやっぱり難しい。そして今の学生は異邦人すら読んだことがない。

 なので、かなり短く、難しい構文(特に時制に関して)が全くない、この種の教科書的文体のテキストの有効性は高いと思う。個人的には、初めてフランス語で論文(修士論文など)を書く人こそ、これらをたくさん読んでおくといいと思う。村上春樹を読んでも、そのまま論文に使える文型はそれほど多くないから(春樹のフランス語訳は、もっとも読みやすいフランス語だが、ハルキストにしか使えない勉強法だという欠陥がある)。

 

 確か、アマゾンフランスのアカウントを初めて作ったときにはKindleが読めずに苦労した記憶があるが、住所をフランスに設定し直すなどすると使えたと思う。