5月28日にチャンピオンズリーグ決勝がパリであった。

日本時間では29日の朝四時キックオフなので、アラームで起きて急いで見てみると、なぜかまだのんびり解説者が話をしている・・・

どうやらリバプールファンで偽チケットを持った人がスタジアムになだれ込んだせいでキックオフが遅れているそうだ。確かにネット上では3メートルはありそうな柵を乗り越えるリバプールファンの映像が流れている、全くあいつらは・・・

 

と思っていたのだが、どうやら真相はだいぶ違ったようだ。UEFAとパリ警察は自分たちの不手際を隠すために、リバプールファンに(ヒルズボロの悲劇がまだ忘れられていない)罪をなすりつけたようだ。

というルモンドのドキュメンタリーをみた。

 

 

あのカオスは複数の要因が重なって起こったようだ。

まず、レアルファンとリバプールファンは、パリで遠く離れた「ファンゾーン」に集められており、キックオフ前にチケットを持った人だけがスタジアムに向かったらしい。チケットを持っていない、あるいは偽チケットを持った数万人のリバプールファンがスタジアムに押し寄せたというのはどうやら嘘。割り当てられたナシオンの広場でのパブリックビューイングを見ていた。ちなみにレアルファンはスタジアムのすぐそばの公園に集められており、そのまま何の問題もなくスタジアムにとほで入れた。

 

 第一の問題は、当日、国鉄のストライキがあったことだ。パリからスタジアムに行くには国鉄ではB線とD線、メトロでも一本、合計三つのルートがある。ところがストライキにより、もっとも主要なB線が減っていたため、D線で移動するようにリバプールファンに指示があった。

 そこで彼らはD線の最寄えきで降りた。そこから順路にしたがってスタジアムに行けば何の問題もなかった。しかし、駅とスタジアムの距離は結構離れており、尚且つ直線ではないので、枝分かれがいくつもあり、悪いことに、「こちらスタジアム」という矢印がそっちに向いてしまっていた(確かにその方向なのだが、UEFAなどが用意した遠足のしおりのルートとは別)。

 直線距離でスタジアムに向かった彼らは、何列にも別れた入場ゲートがある正門ではなく、高速道路の下の狭いパスやらを通って、係員があまり待機していない裏口のようなところに行き当たってしまい、そこで数万人の密集ができて、動けなくなってしまった。

 この群衆(「リバプール」の「群衆」と聞くだけのパリ警察はもうパニックになったのだ)を解消するために、やむなく事前チェックを諦め、全員をスタジアム前庭まで通した。で、そこに行ったのだが、なぜか門はしまっている。開けてくれよ。

 こうして、上記の、つまり柵を乗り越えてスタジアム入りする数人?数十人の若者が現れる。そしてそれに対して警察は催涙スプレーで応戦する。こうなるとこの門はもう開けない・・・

 そうして、試合は40分近く遅れて始まり、それでも、リバプールファンの一部は前半の最後になってようやく入れたという有様だったのだ。

 

 そして、実は試合後にもっとひどいことが起こっていたという。会場はスタッド・ド・フランス。パリ北部の郊外サンドニにある。サンドニは実は行ったことがないけど、いうまでもなく治安は悪い(だから用事がない人は行かない)。群衆と警察に怯え、ようやく入れたスタジアムで(後半だけは)見れた試合にも負けて、消沈するリバプールファン。催涙ガスが使われたこともあり、多くのゲートが使用できず、小さな門から無理やり出されて、またも群衆に。そして駅まで向かう途中で、地元の(試合とは関係がない)ギャング集団に遭遇し、殴られたり、ものを盗まれたりした(警察は何もせず)という。(サンドニでは起こりうる事件だから、メインルートから適切に、真っ直ぐに駅に誘導し、混乱が起きる余地をなくさなければいけなかった)

 

 でも、全部、どのようにして起こったのが容易に想像できちゃうのが悲しいところ。国立図書館の荷物検査とかでいつも思うけれども、列に並んでいる人の気持ちを思いやるって精神がないよね(係員も、並んでいる人も)。一時間も並んでイライラしているんだから、自分の番がきたら後の人のためにも二秒で通るようにするのが当然だし、そうすべきだと思うのだが(事前にポケットの中は全部出して、カバンのチャックは開けて、とか)、そうする人っていないんだよね、自分のばんがきてから、今まで何を見てたんだよって突っ込みたくなるくらい、のんびりと「え、ポケットの中も出すんですか? パソコンは?」とか言いながら、ゴソゴソしている。で、係員はこっちは完璧な準備をしているのに、そのスピードについていけないから、「まって、まって、あなたの番はまだ」とかいう、だから列が伸びるんだよ・・・日本のイベント運営システムを輸出したらいいと思う。