Harry Potter Et le Prisonnier D’Azkaban/Contemporary French Fiction

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いやあ、面白いねえ。2巻はサスペンス的な面白さがあるけど、3巻目は「自分の父親を知ろう」的な、物語の大きなテーマが現れてくる。おそらく、ホグワーツ魔法学校物語としての面白さはこの辺が頂点なんだろうな。シリウスが出てからはどんどんシリアスになっていった印象しかないから。

 そしてフランス語の勉強にもとても有益。一二巻はずいぶん語り口調が幼稚だったのに、ここに来てロンが、二度くらい読み返さないといけない皮肉、ジョークを口にするようになる、なるほど、フレッドとジョージにうまく感化されているな。
 大人達も、これまではおこちゃまにむけて話していた感が強かったけど、少しずつ一人前のとはいかないまでも、ちゃんとした対話相手として見てもらっているなって場面も多くなる。ダンブルドア先生の、いつもの物語終盤での説教も一ページくらいしかないんだけれども、傾聴傾聴。えーと、今回は、なんだっけ?ああ、そうそう、ネズミの命を助けたことでヴォルデモートの復活を手助けしてしまったのではないかと悔やむハリーに対して、「命を助けられた魔法使いは、その人に負債を抱えてしまう。ヴォルデモートのもとに自分に借りのある魔法使いを送り込んだことはまあ悪いことじゃないよ」的な慰めだったかな。それと、死んだ人間もそれを思う人の心で生き残り続けると。

一番熱いシーンは言うまでもなく、「早く、パパ助けに来てよ、僕がやられちゃうよ・・・、あれ、もしかして、パパだと思っていたのって」ていうシーンだ。ヴォルデモートに父と母が殺される場面に苦しめられ、自分のピンチでも死んでいるパパに助けてもらうことを待っていたハリーが、大人への階段を登るのだ。
 
クィデッチの試合もよく書かれていて、レイブンクローの新登場のエース(あの金のボールを捕まえる係)がチョウ・チャンで(一学年上だったんだね)、そんでもってハッフルパフのエースが、でかいのになぜかやってるあの・・・えーと、イケメンのやつだ。セドリック?みたいな名前だったけな。次の巻から二人とも出番が出てくる。

急に出て来ても感情移入できないから、他の館の人はクィディッチの試合を通して知り合うようになってるんだな。占い学で、ラベンダーとかパーバティとかいういかにも頭の悪そうな名前をした女の子達が、しっかりとスピリチュアルにハマっていて、のちの巻であのうざさ加減がうまく生かされるんだなとわかる。
 占い学といえば、ハーマイオニーとマクゴナガル先生が、まったく同じ態度をしていて笑える。そりゃそうだ、勉強しにきたつもりなのに、中二病患者の相手をしないといけないんだから、当然だ。

 でもあの砂時計は反則だよねえ、いくら魔法とはいえ13歳の少女に貸しあたえちゃああかんでしょ。とはいえ、「自分を騙せ!確定した事実を変えずに、結果を変えろ」ていうシュタゲセオリーを完璧に守ることで、一人と一頭の命を救うところなんかは最高に熱い。そう、だからハリーの成長が熱いのもあるけど、それ以上に(伏線がバレバレとはいえ)、ちゃんと過去改変のルールを守りながら絶望的状況をひっくり返すシナリオが熱い。
 だから正直名付け親との心温まるハートウォーミングストーリー(大事なことなので以下略)とかはどうでもいいんだけども、物語の構成としてうまくかけてるなあって思う。
 そういえば、この巻だけはヴォルデモート君はお休み。2年連続ハリーにコテンパンにやられて疲れたんでしょうね。ブラックとかいう脱獄囚が怖い!って煽るんだけど、二度目以降に読んでると全然緊迫感が伝わらないのが難点か。
 ブラックの怖さ!を強調するためのミスリード用の出来事(太ったおばさんの絵が切りつけられたり、夜中にナイフを持ってロンの寝顔を見に行ったり・・・)があんまりにも露骨に悪すぎるから、「うわ〜、ブラックって実はいい人だったんだ〜、これから一緒に暮らそうね、大好き!」とは到底ならないのが正直なところだ。それと同じことがスネイプもといローグ先生にも言えるんだけど、それはまた後の話か。