コンラッド短篇集 (岩波文庫)/岩波書店
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これはおもしろい。難しいこと抜きに面白い。
コンラッドはかつては商業的な作品を多く書いた作家って評価だったんだな。徐々にその文学的価値が注目を集めるようになり、現在では20世紀文学の嚆矢であり、イギリス(とアメリカ)に限定されていた英米文学を世界規模のものへと大きくした作家と見なされるようになったと。
この短編集に収められている作品は、全部面白い。商業的な面白さを軽視していない短編で、ストーリーに依拠しすぎていると、ほかの作家なら言ってしまいそうだが、コンラッドの場合はそれが気にならない。舞台も世界各地。南米、ロシア、ナポリに、イギリスのど田舎、あっちこっち。それでいて、どこを舞台にしても、その土地固有な文学を作ってしまうところが、コンラッドの恐ろしいところ。ロシア領ウクライナ生まれのポーランド人であり、船乗りになることで英語話者となったコンラッドにとって、根ざす土地はなく、逆にどんな土地でもそこの土地の物語を編み出すことが出来たのだろう。
 どの短編も、その土地の濃密な空気がぷんぷんとしてくる佳作ぞろい。純粋に楽しめる読書。