電車のつり革につかまっていたら


前に座る少しギャルっぽい女性が


「毎日必死で生きているのに、私はごぼうのささがきもできないでいるよ」


と言っていた。


私もだ。


私も毎日それなりに生きているのに

パンダの名前も覚えられない。


ここ数日東京の空はびっくりするほど綺麗。

宗教画かと思うくらい。


彼女の友人らしき女性が「ささがきって何?」と聞いていた。

ひどい潔癖だからどうしても誰かと手を繋ぐことができない、と


そう言う彼女の


ぎゅうと組み合わされた両手をみて


少し羨ましくなる。


その右手と左手の間に

小さな神様がうまれているように思う。

ゆうこちゃん!と強く呼ばれ振り向くと


ちかちゃんが立っていた。


はて、私はゆうこちゃんではないけれどと思ったけれど


ちかちゃんがそういうのならそうなのかもしれないとも思う。


その方がいいような気もした。

そんな強さがあったし、


その方が、

ゆうこちゃんではない私がかえって揺るがないような気もした。