「家のカギが迷子です」
「救いようのない馬鹿がいる」
少し肌寒い今日。バイト代が入ったためルンルンでお気に入りの抹茶大福を買いに行ったのが50分前。
家の前で「待っていたぞ!寒い!」と叫ぶびしょ濡れの塊を見つけてしまったのが30分前。
とりあえずシャワーにぶち込んだのが25分前。
「あのシャンプーめっちゃいいね!同じの買ってもいい?」
「いいけど。それ1800円だよ」
「たっか!」
そうだろとも。雨の日の癖っ毛が気になって最近購入したばかりだ。
これが高級の力…。そう言って自分の髪を何度も手櫛する。
まぁ一般的に1800円が高いのかどうかは知らないが、少なくとも金銭感覚が同じなのはやはり楽だ。
「なぁなぁ」
「なんだよ」
「見て見てコレコレ!」
人差し指をピンと差し出されたので目線をそちらに向けた。
爪の間にちょうど良く収まっているのは。
「タオルの繊維じゃんか」
「すごくない!?こんなキレイに挟まってるの初めて見た!」
「そうかいそうかい」
「なぁなぁ」
「なんですか」
「取ってー」
さっきから変わらず差し出される人差し指。なんでこいつのゴミを取ってやらねばいかんのか。
あぁー。ちょうど目の前にはゴミ箱がある。そう思いつつも、今日は雨だ。あぁ嫌だ。
「えい」
「…えっ!なんでこんな近くにゴミ箱あったのに床に落としたの!?」
「今日は雨なので」
「そうやって部屋は散らかっていくんだぞー!」
ぺしぺしと肩を叩かれた。意外とまともなこと言うじゃないか。
少し感心したもののさっきの茶色を拾う気はない。面倒だ。それよりも抹茶大福が食べたい。
台所で少量のお湯を沸かし、緑茶のティーバッグをタンブラーに入れた。
少量のためすぐ沸いたお湯を注ぎ、さっきまで自分が座っていた場所へと戻る。
「あ」
視界にさっきの茶色が映った。
「……ふっ!」
「吹き飛ばすなよ!」
何となく煩わしいな、そう思い勢いよく空気を吹きかけてやった。
ふわふわと隅のほうへ飛んでいく茶色を見て、満足した気持ちになる。
「完璧だな」
「まったく!見えなくなったらキレイなわけじゃないんだからな!」
「はいはい」
今日も今日とて、抹茶大福は高級なお味だった。
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雨の日。という理由をつけてサボりたい時ありますよね。
シャンプーの値段は人それぞれだと思いますが、
個人的には1000円より上はいいやつ。