あなたにもわかる相対性理論 (PHPサイエンス・ワールド新書)/茂木 健一郎

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もしや私でも相対性理論を理解できるのか?
そんな淡い期待が、この本を手に取らせた。

相対性理論は憧れの理論だった。
私の日常から最も離れた世界にあるような、人間の知の集大成であるような、そんな崇高な理論。
だがアインシュタインに対しては「原爆の生みの親」だという観念が拭えず、妙な敵対心を覚えていたのも事実だ。

本書を読み進めるうちに、まずは物理学の面白さをうっすらと感じてきた。
物理学の波及性は、他のどの学問よりも広いのではないか、と。
数学の難問と呼ばれる定理には物理学の理解が不可欠である。
また、相対性理論で言えば、キュビズムやシュールレアリスムとも関係が深い。
ピカソのゲルニカを思い浮かべれば分かる。まさに時間と空間を超えた画風だ。

しかし、期待に反して、分からない。やはり、分からない。
そもそも波動説と粒子説を知らない私は苦しむ。
誰にとっても平等にあるはずの時間と空間が、「絶対的」ではなくて「相対的」だというのだ。
俄かには信じ難い。そもそも完全なる客観のことを科学と呼ぶのではないのか。
凝り固まった脳が、理解の邪魔をした。

本書の後半からは茂木氏によるわかりやすい(らしい)説明が繰り広げられている。
が、分かったような分からないような、そんな煮え切らない読後感が待っているだろう。(少なくとも私はそうだった。)

茂木氏はアインシュタイン力として、
①反発力
②見えないものを見る力
③粘り強く考える力
④平等力
⑤ユーモア力
⑥浮世離れ力
⑦方程式力
⑧信じる力
⑨自立力
を挙げていた。

言葉にすれば簡単だが、どれひとつとってもなかなか実践できない力である。
余談だが、ユーモア力に注目するのは茂木氏らしい。茂木氏は最近バラエティー番組で体を張っているのはそういうことだったのかと納得。
それはそうと、アインシュタインの人柄には好意と尊敬の念を抱かずにはいられなかった。
真理への追究心・探究心こそが彼の人生のエンジンであり、生きる意味そのものであった。
権威や俗世にとらわれない姿勢は凡人には真似できない。
ガリレオ、ニュートンらが築いてきた前提を疑うには、はかり知れない想像力と勇気がいる。
気が遠くなるほどの偉人だ。


ところで巻末に掲載されている「E=mc2」を証明した、たった9ページの論文。
これっぽっちも理解できないが、簡潔さは気に入った。
当初の期待は裏切られたが、よしとしよう。

生まれ変わったら科学者になってみたいと想いを馳せられる本だった。