バイデン副大統領による米国のアジア・シフトに関する講演 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

バイデン副大統領による米国のアジア・シフトに関する講演

18日、バイデン副大統領は、ジョージ・ワシントン大学で米国のアジア・シフトについて講演を行いました。全体的にまとまっており、オバマ政権の問題意識が鳥瞰できるという意味で、また中国に強い立場を採っているという意味で興味深いものでした。

ただ気になったのは、日本に対する言及は多くの国の後で、且つ日本を主語にした言及も日本単独で取り上げる言及もまったく無かったことです。海洋における中国をめぐる問題についても、南シナ海の紛争はASEANを明言して擁護したのに対し、日本についてはありませんでした。安倍政権樹立以降のオバマ政権の日本軽視あるいは無視の態度は、ちょうど自公政権が参議院選挙で勝利するであろうと言われた選挙中にもかかわらず、副大統領も同様であったことに懸念を抱かざるを得ません。「強い日米関係が復活?」のところでも書きましたが、気になります。

なお、長文なのですべてを約してはいませんが、小生が興味深いと思た部分のみの抄訳は以下の通りです。


 イラクとアフガンという二つの戦争の終了による余力、変わりゆく速いスピードの世界への対応という二つの要素が、より大きな機会と成長をもたらす地域への投資と世界の安定に取り必要な投資を行うべき地域へのますます大きくなる関与を要請した。その地域とはアジア太平洋地域である。
 国防省で戦略レビューを実施し、アジア太平洋地域には、素晴らしい未来と同時に、不確実性と政治リスクが存在すると見てきた。そこで、我々はまず、同盟関係の強化、安全保障上のパートナーシップ域内機構に対する前例がないほどの投資を実施してきた。このため、オバマ大統領はリバランスによりさらなる資源と関心をアジア・太平洋地域に向けるような政策を取ったのである。アジアにおける変化が期待通りに起こらなければ、世界的な不安定が発生する。
 米国は、経済的・戦略的に共通の価値観を伴って関与することにより、太平洋の安定と繁栄に大いに貢献することができるであろう。我々は現在、関係するすべての諸国にて安全と繁栄をもたらすであろうアジア・太平洋地域における秩序の出現を促したい。米国は、世界にあまねく恩恵をもたらす21世紀のルールを作る上での指導的役割を果たしたい。
 我々の視点からは、進むべき道は明確で、国境間の垣根を下げ、知的財産権を守り、一定のルールの下で活動することにすべての者が関与し、経済的統合を進めることにある。その努力の一つが世界のGDPの4割を占めることになるTPPであり、東南アジアにおける出現しつつある市場との関係構築であり、中国との経済強化に向けた挑戦である。中国は国内的な問題に直面しているものの変革に対応する必要があり、消費型経済、市場経済、よりよく規制された財政システム、為替レートの自由化に移行する必要性がある。インドやASEANについても、財政、ルール、新エネルギー等で大きな挑戦を克服する必要がある。
 当該地域においては、誤解や誤った行動による問題を避ける必要がある。航行の自由、正当な取引の自由、国際法と基準の尊重、平和的な領土問題の解決は、あらゆる者にとっての利益である。だからこそ、中国とASEANが、南シナ海における行動規範に迅速に合意するよう促しているのである。
 北朝鮮については、核及びミサイル・プログラムは地域に対する明確な脅威であり、それゆえ日韓と協調していくが、その一方で過去にないほどこの問題について中露とも協調を深めている。この意味で、中国の北朝鮮に対する強い立場を歓迎する。北朝鮮は対話を求めているが、それはかつて見た光景に過ぎない。北朝鮮が純粋な協議に臨む準備がある場合のみ、対話することになるであろう。北朝鮮は、他の国と同様に平和と安定を享受できるが、それは核抜きの場合のみである。北朝鮮の選択肢は、国民のためのより良き道か、あるいは現在と同様な下り坂か、である。
 NATOやEU諸国とは密接に協議し、欧州以外の地域に関与する曲り道に来ており、環太平洋の協力は、21世紀における世界に貢献するものであり、欧州もそこから利益をえると説明している。
 中国に対しては、米国に対抗する様な賭けを決して行うべきではないと述べた。米国は経済的な復活を果たしつつあり、中国、インドを含む当該地域の発展は、国際社会及び米国の発展に密接に関係している。アジア・太平洋との関係は、ゼロ=サム・ゲームではない。



http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/07/18/remarks-vice-president-joe-biden-asia-pacific-policy