妊娠13週6日。
昨日、夫に「くさい!!」と怒鳴ってしまった。
仕事でくたくたになって帰ってきた人に向かって言う言葉じゃないことくらい、わかっているのに。その瞬間の私は、そんな当たり前のことすら見えなくなっていた。
最近、匂いに敏感すぎる。
自分でもびっくりするくらい、ほんの少しの生活臭でさえ、全身が拒否するみたいに反応する。頭では「仕方ない」と理解しているのに、体がついてこない。むしろ逆で、体に引っ張られて感情が暴走する。
夫は「ごめーん」「怖いよう」と、ふざけた調子で返してくれた。
その優しさに、あとから胸がぎゅっとなる。
なんで、あんな言い方をしてしまったんだろう。
時間が経って冷静になると、ちゃんとわかる。
あれは怒ることじゃなかったし、伝え方はいくらでもあった。けれど、そのときの私は、自分を止めることができなかった。
思い出すのは、母のこと。
普段はとても愛情深くて、優しい人だった。
でも、ある瞬間にスイッチが入ると、まるで別人みたいになる。その変化が、子どもだった私には怖かった。
私は、ああはならない。
ずっとそう思ってきたのに。
気づけば、同じように「急に感情があふれて止まらない自分」に出会ってしまっている。
それが何より、怖い。
でも、ひとつだけ違うことがあるとしたら——
こうして、あとから立ち止まっている自分がいることだ。
どうしてあんなことを言ってしまったのか。
どうすればよかったのか。
本当は、どうしたかったのか。
それを考えている自分が、確かにいる。
そんな今日は、夫は出張へ。
プレッシャーがのしかかる、大事な出張。
普段なら出張の日にお弁当は作らない。荷物になるし、食べ終わった後も困るから。
それでも今日は、捨てられる容器にオムライスを詰めた。
ケチャップで、小さく「Fight!」と書いて。

言葉にするには少し照れくさい、
「昨日はごめんね」と「応援してるよ」を、そこに込めた。
お昼頃、夫からLINEが来た。
「お弁当ありがとう。いい嫁持った」
その一文を見たとき、少しだけ、息が詰まった。
私は、自分のことを「ひどい嫁だ」と思っていたのに。
あんな言い方をしてしまった自分を、どこかで責め続けていたのに。
夫は、そんな私を「いい嫁」と言った。
きっと、昨日の一場面だけで私を見ていない。
ちゃんと、全部を見てくれている。
できなかったことも、できたことも、
うまくいかなかった日も、そのあとに差し出した小さな行動も。
夫は、いつも一枚上手だ。
だから私は、また少しだけ前を向ける。
完璧じゃなくていい。
ちゃんと戻ってこられるなら、それでいい。
あの頃、怖いと思っていた側ではなく、
安心できる側でいたいから。
今日のオムライスと、「いい嫁持った」という言葉は、
これからも、安心できる側でいようと思えたきっかけだった。