※まだ読んでない方は飛んで下さい。
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撮影現場は静かだった。
「なんか・・・
空気が違いますね」
まだ19歳の彼女の
その言い方は
寂しさを含んでいて、
「・・・そうだね」
空気が違う。
その表現がこの場には
ドンピシャな気がした。
緊迫した本番の場面は
もちろん別の話だけど、
いつもなら
笑いが絶えない現場だ。
合間には笑いが起こり、
リラックスも出来るし
オンとオフが
ハッキリとわかり易く
ゆえに集中もしやすい。
そんな空気感の現場は
やりやすいと気づいた。
今日・・・
初めて・・・
今は自分の心臓の音さえ
聞こえてきそうなほどに
シーンと静まり返ってる。
・・・はぁ。
こんなにも違うものか。
現場の空気ってやつは。
演者の皆もスタッフも
ただ淡々と進めるだけ。
・・・いや、
それは普通なんだけど。
こんなにも・・・違う。
彼が居ないだけで・・・
「二宮さん入ります」
モチベーションが上がらず
溜め息ばかり吐いてたオレ。
スタッフのそのひと声に
ドキンっと心臓が跳ねた。
「おはようございます。
お待たせしちゃいました」
白衣を纏いながら現れた
その人に一斉に湧く現場。
・・・空気が・・・
一瞬で変わるのが分かる。
途端に笑いが溢れて
その直後、
彼と目が合った・・・。
ドキドキ
ドキドキ
ゆっくりと近づく彼に
心臓が激しく踊り出す。
「・・・二宮さん」
「よっ。おはよう」
「っ、は、はいっ、
おはようございます」
嬉しすぎて上擦った声。
「・・・ぷっ、
何だよ緊張してんの?」
さっそく笑われてしまった。
「すっ、すみませんっ」
「ふふっ。あのね?
ちょっと・・・出過ぎ」
二宮さんはそう言って、
オレの腹に
軽くパンチを寄こした。
