「天の岩戸の変は貴神の罪に非ず、罪は却つて天津神の方にあり」(十五巻一二章「一人旅」。次も)

「時雨(しぐれ)の中の一人旅、実に淋しい思ひを致したるが…一人の同情者を得たり」

「貴下は高国別の宣伝使、④活津彦根神に在さずや」  (十五巻一五章「山の神」。次も)

「素盞嗚の大神の御許しを得て第一の御子たる、此愛子姫様を貴下の妻と神定め」

 このように、三男神は素盞嗚尊を支えている。

○疑い深い厳の霊

 

ところで話が前後するが、天照大御神は、三女神の一人、①深(み)雪(ゆき)姫(ひめ)が武芸に励む様子を見て、素盞嗚尊が国を盗りに来たのではないかと疑う。

「天照大御神は、善(ぜん)言(げん)美(び)詞(し)をもつて世の曲業を、見直し聞き直し詔り直すべき天地惟神の大道を無視して、殺伐なる武器を造り武芸を励むは弟神素盞嗚命の高天原を占領せむとする、汚き心のあるならむと、内心日夜不快の念に駆(か)られ給ひつつあらせられた」

(十二巻二二章「一嶋攻撃」)

 しかし、①深雪姫が武芸に励んでいたのは、悪魔征討の準備のためであった。

「悪魔は剣(つるぎ)の威徳に恐れ、武術の徳によつて心を改め、善道に帰順」「武術は決して折伏のためではない、摂受のためだ。悪魔を払ひ万民を救ふ真心から出でさせられた御神策」

      (十二巻二二章「一嶋攻撃」)

天照大御神の誤解であるのだが、元々疑い深い御性格である。

「変性男子の霊(みたま)で、随分烈(はげ)しい我(が)の強いかみさま」      (十二巻二五章「琴平丸」)

「霊性はお疑いが深い」

(十二巻二九章「子生の誓」)

 天照大御神の烈しい霊性と疑いの深さから、五男神の二人を遣わして、素盞嗚尊の三女神の二人を武力で攻撃する。

○攻撃の峻烈さ

 二男神の攻撃は峻烈で、全島を焼き滅ぼし人民を虱(しらみ)殺(ごろ)しにせんとの勢いであった。

「②天菩比命(あめのほひのみこと)とか云ふ血(ち)染(ぞめ)焼尽(せうじん)の神様を遣はして、全島を焼滅ぼし」「③天津(あまつ)彦根(ひこねの)命(みこと)…が…竹の島の宮殿を破壊したり、人民を…虱殺(しらみごろし)に屠(ほふ)り殺す」 (十二巻二五章「琴平丸」)

まさに天照大御神こそ、「善言美詞をもつて世の曲業を、見直し聞き直し詔り直すべき天地惟神の大道」(十二巻二二章「一嶋攻撃」)を無視していた。

しかし、二男神は二女神の柔らかな対応にアフンとして疑いを晴らす。

「①深雪姫様は案に相違の美しき瑞(みづの)霊(みたま)の神様であつたと云ふ事が分り、アフンとして帰られた」「サルヂニヤの①深雪姫様のやうに柔かく出られて、アフンとして帰られ」

(十二巻二五章「琴平丸」)

○心の岩戸を開く言霊

 ①深雪姫が②天菩比命(あめのほひのみこと)の「心の闇の岩屋戸を開く」よう言向和したところ、②天菩比命(あめのほひのみこと)が「懺悔の念」を抱く。これは「天の岩戸開き」のテーマに迫る。つまり、天照大御神が素盞嗚尊を疑っていたということは、天照大御神が心の岩屋戸を閉めていたことになる。

「世の悉(ことごと)は何事も 直日に見直し聞直し 言向和し宣り直す 誠一つの一つ島…善と悪とを立別ける 神が表に現れて 疑ひ深き空蝉の 心の闇の岩屋戸を 開かせ玉へ」

「②菩比(ほひの)命(みこと)は思ひ掛無きこの場の光景に力脱け、懺悔の念に堪(た)へ兼(かね)て」

(十二巻二四章「言霊の徳」)

また、竹の島に攻め行った③天津彦根神も、②秋月姫の天津祝詞に心を和らげる。

「荘厳なる一絃琴の音(ね)爽(さはや)かに天津祝詞の声清々しく響き居る。天津彦根神は祝詞の声に心和ぎ茫然として耳を傾け聞き入りぬ。暫(しばら)くにして太刀、弓矢を大地に投げ付け両手を拍(う)つて共(とも)に神言を奏上する急変の態度」

(十二巻二六章「秋月皎々」)

そして、②菩(ほ)比(ひの)命(みこと)は素盞嗚尊の心の麗しさを天照大御神に報告した。

「菩比(ほひの)命(みこと)の降臨によつて、須佐之男命の麗しき御心判明し、命は直(ただち)に高天原に此(この)由(よし)を復命さるる事とはなりける」

(十二巻二四章「言霊の徳」)

つまり、二男神が素盞嗚尊の御霊の清らかさが証明し、結果的に素盞嗚尊を支える立場となっている。

なお、天照大御神が岩屋戸から出られたのも、②天菩比命(あめのほひのみこと)や③天津彦根神の二男神と同様、言霊によるものとなっている。


via 大本柏分苑
Your own website,
Ameba Ownd