同じくらいの時間の睡眠を取っているのに翌朝疲れがしっかりと取れる人と、取れない人がいます。疲れが取れる人、疲れが取れない人の睡眠にはどのような違いがあるのでしょうか?そもそも疲労とは何か、そして睡眠でどうして疲労が取れるのかを解説するとともに、睡眠をよりよいものにするためのポイントを紹介します。

目次

1.疲労とは

 

日本疲労学会によると疲労は「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義されています。肉体的な疲労は末梢性疲労と呼び、運動などによる筋肉細胞の酷使により現れます。末梢性疲労が溜まると全身に倦怠感が生じ、反応やパフォーマンスが悪くなっていきます。精神的な疲労は中枢性疲労と呼び、脳の神経細胞の酷使により現れます。中枢性疲労が溜まると集中力や注意力が欠如し、作業効率の低下などが現れるようになります。

運動や仕事、勉強など筋肉細胞や神経細胞にストレスが加わると、酸化物質が生じます。この酸化物質が細胞の機能を低下させることにより、疲労を感じるようになると考えられています。

疲労はあくまで警告です。脳が「これ以上、心身を酷使すると悪影響が出てくる」ということを警告し、休息を促すために疲労は現れます。この警告を無視して休息を取らずに仕事や運動などを行うと、急激な睡魔による意識消失や頭痛、肉離れなどの身体的な支障が生じるようになっていきます。

「なんとなく疲れたな」、そう思ったら休息を取るタイミングです。重大な悪影響を避けるためにも、この段階で休息を取り疲労を回復させることが大切です。

 

2.睡眠と疲労の関係とは?

 

睡眠と疲労は密接な関係にあります。疲労を回復させるには睡眠を十分に取ることが必要不可欠です。

では、なぜ睡眠により疲労が回復されるのでしょうか?

 

2-1.睡眠は脳だけではなく身体も休める

 

睡眠は脳の疲労を回復させるものと思われていますが、睡眠中はしっかりと体も休まっています。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分かれていますが、レム睡眠時は筋肉が弛緩して身体が深い休息に入っています。身体の疲労は食事をしたり、マッサージをしたり、入浴をしたりすることである程度回復されます。

しかしベストなコンディションに持っていくためには、やはり睡眠が必要になります。特に運動で酷使された筋肉細胞が回復するためには、成長ホルモンの分泌が必要になります。成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されるため、身体の回復のためには睡眠がとても重要です。

 

2-2.眠りの質が浅いと脳に疲労が溜まる

 

一方で脳を回復させる睡眠はノンレム睡眠です。レム睡眠では夢を見るのに対してレム睡眠では夢を見ることは確認されていません。つまりほぼ脳が眠っている状態を意味し、脳の疲労を回復させるためにはこのノンレム睡眠が必要なのです。

ただしストレスやカフェイン、不規則な生活などにより脳がノンレム睡眠を取れないことがあります。その状態が長く続くと、睡眠時間が足りないのと同じ状態になり、脳に疲労が溜まっていきます。脳の疲労を回復させるためには眠りの質を高めることが重要になります。

 

2-3.疲れが取れない睡眠の特徴とは

 

眠りの質が低く、疲れが取れない眠りの特徴は以下のようなものです。

・朝起きたときに熟睡感がない
・夜中に何度も起きてしまう
・なかなか寝付けない

しっかりと睡眠を取れていれば、朝目覚めたときに熟睡感がありスッキリと起きることができます。眠気はすっきりと目覚めてからおおよそ15時間後くらいに誘発されてくるので、6時から8時の間に起床すれば夜の21時から23時くらいには自然と眠くなり寝付くことができます。その後、朝までぐっすりと眠るのが理想的な睡眠です。

しかし様々な要因により、睡眠の質の低下が起きると熟睡感がなく、寝付きづらく、夜中に何度も起きてしまうような睡眠となります。睡眠の質の低下を防ぐためには生活習慣を改善する必要があります。

 

3.睡眠の質を高めて疲れを取る習慣

 

現代社会はストレスが多く、夜遅くまで起きている傾向にあるため、睡眠が不足しがちです。同時に睡眠の質も低下しやすいので、睡眠が足りないことによる疲労も現れやすくなっています。疲労をきちんととるためには以下のような生活習慣を意識するとよいでしょう。

 

3-1.運動習慣をつける

 

人は全く疲れていないと眠気が誘発されづらくなります。外に遊びに行った日の夜はぐっすりと眠れるように、肉体的な疲労は眠気を誘発する働きがあります。日ごろ、運動習慣がない人は軽い有酸素運動をするようにすると睡眠の質が高くなります。きつい運動をする必要はないので、30分程度のウォーキングを意識して行ってみるようにするとよいでしょう。

 

3-2.起床時間、就寝時間を一定にする

 

人間の脳は基本的に規則正しく生活をするようになっています。起床してからおよそ15時間で眠気が誘発されるように、脳は「だいたいこの時間に起きてこの時間に眠る」というスケジュールをパターン化しています。起床時間と就寝時間を一定にすることで、規則正しく眠気が誘発され睡眠の質が高まります。

 

3-3.入浴は就寝の90分前までに

 

眠りを深くするためには深部体温を低くする必要があります。入浴直後は深部体温が高いため、眠気が誘発されづらく眠れたとしても睡眠の質は低くなります。深部体温は入浴後、およそ90分でかけて徐々に低くなっていきます。入浴後、そのくらいの時間が経つと眠気が生じて深い眠りにつきやすくなります。日ごろ、就寝する時間の90分ほど前までに入浴を済ませると、睡眠の質が高くなります。

 

3-4.朝起きたら太陽の光を浴びる

 

太陽の光を見ると脳を覚醒させすっきりと目覚めさせてくれます。眠気が覚めるとその15時間ほどあとに、再び眠気が生じるようになります。朝起きたら太陽の光を浴びるようにすると、規則正しい起床時間と就寝時間を守りやすくなり睡眠の質が高くなります。

 

3-5.ストレスを溜めない

 

ストレスは「交感神経」を刺激して優位にします。交感神経とは昼間に働く神経で、心身を興奮、緊張させ活発な活動をできるようにします。昼間に必要となる神経ですが、ストレスにより夜に優位になると興奮により眠気が生じづらくなります。交感神経が優位になったまま就寝すると、夜間に目が覚めてしまう原因にもなります。夜の交感神経の働きを抑えるためにはストレスを溜めない、適度に発散することが重要です。

 

3-6.ベッドでは眠るだけ

 

ベッドに入ってから就寝するまでついついスマートフォンや本などを見てしまう人もいるかと思います。しかしベッドで眠る以外のことをしてしまうと脳が興奮して、眠気の誘発を阻害してしまいます。ベッドに入ったらリラックスして眠ることに集中するようにしましょう。

 

4.睡眠以外の疲れやすい原因

 

睡眠をしっかりとっているにも関わらず疲れが取れない場合、睡眠以外に原因があるのかもしれません。疲れが取れにくい睡眠以外の原因には以下のようなものがあります。

 

4-1.貧血

 

血液は全身に酸素を運ぶ働きをします。貧血は血液の中の酸素を運ぶ役割をするヘモグロビンの数が減り、酸素の供給量が減少してしまう病気です。酸素は細胞がエネルギーを作るために必要になる物質です。酸素不足になることでエネルギーの生産が十分に行われず、体が疲れた状態になってしまいます。貧血を防ぐためには鉄分を日ごろから意識して摂取することが必要です。女性は生理があるため出血により、鉄分が不足しやすいです。そのため日頃からサプリなどで補うとよいでしょう。鉄製のフライパンを使うと日常的に鉄分が取れるので、料理をする人はそれも有りかと思います。

 

4-2.更年期障害

 

女性は30代後半から50歳くらいにかけて、徐々に女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減少していきます。女性ホルモンのバランスが崩れることで心身に様々な不調が生じるのが更年期障害です。心身が女性ホルモンのバランスの乱れに対応するために様々な無理をします。その際、エネルギーが使われ疲労感や倦怠感を生じるようになります。疲労感・倦怠感は更年期の女性の7割が感じる、更年期障害の典型的な症状です。

 

4-3.うつ

 

うつになると精神的な落ち込みにより、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れて、睡眠の質が低下します。また食欲も低下する傾向にあり、エネルギー不足による疲労が起きやすくなります。

 

4-4.運動不足

 

運動不足が続くと、筋肉量が低下していきます。筋肉は熱を生産するため、消費するエネルギーも多くなります。運動不足が続くと身体が「ここまでの筋肉はいらない」と判断して、消費エネルギーを少なくするため筋肉量を低下させてしまいます。筋肉量が低下していくと、少しの動きだけでも疲れやすくなります。最低限、日ごろから筋肉量が低下しない程度の運動をすることが大切です。

 

5.まとめ

 

・脳の疲労はノンレム睡眠時、体の疲労はレム睡眠時に回復する
・睡眠の質が低いと心身の疲れが取れず、集中力や反応が落ちていく
・睡眠は疲労の回復に重要な役割を持っているので、睡眠の質を高める生活習慣をすることが重要
・睡眠以外では貧血や更年期障害、うつ、運動不足が疲労の原因となる

これらを踏まえてキチンとした日常生活を送りましょう。

 

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