大宮妄想小説です
BL要素含みます
パラレルです
side N
彼女が出ていった後、大野は俺を抱いたままソファに座り、どこかに電話をした。
電話から漏れる声は大野の姉ちゃんで、俺の行方を俺の実家に行って訊いてくるって言って電話が切れた。
俺の行方は実家に訊いても無駄なんだよ。
絶対に大野には教えないように頼んでるから。
そう思いながら大野を見つめる。
教えてもらえなかったら大野はどうするのだろう?
少しは悲しんでくれる?
それとも、別に良いかってすぐに諦める?
悲しんでもらいたいと思う自分。
全然悲しんで貰えなかったら……なんて怖い考えも浮かんでしまって。
このままここにいるのが怖いって思ったんだ。
そうだ、そういう可能性だってあるのに、俺が居なくなった後の大野が見たいなんて馬鹿な事を考えて、多分そのせいでポチと入れ替わってる。
俺……馬鹿だな。
俺が考えている間、大野も何か考えているようで、前をキッと見つめたまま険しい顔をしていた。
「くそっ」
そう言ってソファをいきなり叩く大野。
いつもとは違う大野に驚いたけど。
彼女と別れてまた自分はダメだなぁって責めているんだろうか。
そう思ったら心配で、思わず慰めるように大野の手にすりすりしていた。
「お前、優しいなぁ」
そう言って大野がぎゅっと俺を抱き締めてきた。
ちょっ、俺、まだ大野を諦めきれていないのよ。
それなのに、こんな事されたら刺激が強過ぎる。
だから、「ぐぅ」って変な声が出てしまった。
じっと見つめてくる大野。
ヤバイ、バレただろうか?
しばらく変な空気が流れたけど、すぐに大野のスマホが鳴って。
大野は俺を下ろすと一人寝室に入っていってしまった。
追いかけるけど間に合わなくて、目の前でバタンとしっかり閉まるドア。
多分電話は大野の姉ちゃんからで。
俺の行方は教えられないって大野に告げるはずで。
ドアに耳をつけてみる。
でも寝室の防音は完璧らしくポチの耳でも全く大野の声は聞こえなかった。
「えっ……、俺、大事な事が結局全然分かんないんじゃ……」
入れ替わったのに、結局大野の反応が見られないなんて。
「でも、これで良かったんだ……」
悲しんでいる大野を見たら、きっとまた傍にいたくなってしまうし。
全然悲しんでいない大野を見たら、諦めはつくだろうけど……、悲しんでくれてるかもっていう甘い幻想に頼って生活していく予定だったから、それが出来なくなって辛い毎日になるだろうし。
だから、もうこれで良い。
「相葉さん、もう満足したんで、戻してくれませんか?」
そうリビングで呟いてみたけど……。
俺は元には戻らなかったんだ。
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