最終話です
大宮妄想小説です
BL要素含みます
パラレルです
side O
それからまた、俺と和さんの雪かきも、学校終わりの翌日分のパンの仕込みも再開した。
「チョコレートケーキみたいなパンは、販売するのやめようと思って」
「えっ、美味しいのにどうしてですか?」
「あのパンは、智くんだけに作りたいんだ」
「勿体無い……」
そう言ったけど、これからもずっと、あのパンは俺だけのために和さんが作ってくれるんだと思うと嬉しくて口元が緩むのを隠しきれなかった。
だから和さんにも気づかれて笑われてしまった。
そして、3月初旬……。
とうとう卒業する日がやってきた。
和さんの全部を貰うという約束の日だ。
だから高校生最後の日だったけれど、寂しい気持ちはなく、むしろ高校生ではなくなる日が待ち遠しかった。
それに、これからは見習いとして働くから今までよりも和さんと一緒にいられる時間が増えるんだ。
「卒業おめでとう、卒業式、いってらっしゃい」
いつもどおり雪かきをして、イートインスペースで試食をして、卒業式に向かおうとしたら和さんが言った。
「ありがとうございます。
和さん、卒業したらって約束覚えてますか?」
まさか俺だけが楽しみにしていて、和さんが忘れていたら?なんて心配で訊いたけど、杞憂だった。
「覚えてるよ……」
そう言って一気に真っ赤になる和さん。
触れたら火傷しそうな程赤くなった和さんの耳に触れる。
「閉店時間に迎えに来ます。
和さん、明日はお休みですもんね?」
意図を持って耳朶に指を這わせると、和さんはピクッと肩を震わせた。
「和さんの全部を知るのが楽しみです。
俺の全部も教えますね」
そう言って耳朶にキスをすると、和さんからパンの優しい香りがした。
「いってきます」
店のドアを開けて和さんに手を振る。
バス停に向かって歩き出した俺からも、和さんと同じパンの優しい香りがした。
傍に和さんが居てくれているように感じられて思わずふふっと笑う。
これからもずっとこの香りに包まれていたい……。
そう思った。
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あとがきは12時頃アップします
今回あとがきにおまけはつきません
ただ、これからの更新についてお知らせがありますので読んでいただけたら嬉しいです