大宮妄想小説です

BL要素含みます

パラレルです







side O







それからも俺は毎朝パンを買うという口実で彼――二宮和也さんに逢いたくて店に通った。



流石に登校時と下校時、両方通う事は出来なかったから、なるべく二宮さんと話せるように客の少ない時間帯にしようと思った。

それに、朝から二宮さんに逢うと一日が鮮やかに色づいて見えて一日中優しい気持ちで過ごせたから、朝の登校時に決めた。



朝の時間帯はちょうどピークを越えたあたりみたいで、他にお客さんはまばらにいるぐらいだったため、二宮さんと会話する事が出来たんだ。


とはいえ、ほとんど二宮さんが話しかけてくれて、しかも聞き上手で会話を引き出してくれるから、俺も色々話せるようになっただけで、俺からは気の利いた話題を出せるわけではなかったけれど。



今では進路の事なんかも話せるようになってきた。



でも二宮さんは人の表情を読んだり、言葉から気持ちを察する事にも長けているから、俺の家庭の事といったプライバシーを侵すような質問をしては来なかった。

多分、俺が話しづらそうな顔をしていたんだと思う。


だから俺は二宮さんが質問してこないのをいいことに、自分が『Tendre』の社長の息子だということは二宮さんに話さない事にした。



二宮さんに逢いたくて引っ越してきた。

こんな風に毎日でも逢いたいと思う人に出逢ったのは初めてで、逢うと胸が温かく音を鳴らす。

話していると時間を忘れて、ずっと話していたいと思う。

他の人と二宮さんが楽しそうに話していたらモヤモヤする。

この気持ちは、「好き」で間違いないと思うから、二宮さんの前では、何の肩書きもないただの高校生の大野智でいたかったんだ。



ただ、好きだと伝えるべきかは悩んでいた。

男同士だから悩んでいるわけではない。

客で恋人同士の男性達を見ても二宮さんは特に偏見はなさそうだったから、そこは心配してはいないんだ。



嫌われてはいないと思うけれど、二宮さんはみんなに優しいから、俺だけを特別に好いてくれているとは思えなかったのが理由だ。

好きだと伝えて、今の関係を続けられなくなるのが怖いんだ。






「俺は臆病者だな……」






聴こえないように呟きふぅっと溜め息をついて接客する二宮さんを見つめた。


すると、俺の視線に気づいた二宮さんが俺を見てニコッと花が開くように笑った。


好きだと言ったら、この笑顔がもう俺には向けられなくなるかもしれない。

それならば今はまだ臆病でも良いから、少しでも長い間この笑顔を見ていたいって思ったんだ。








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