こちらは『優しい香り、恋の時間』と内容は同じで智くんサイドのお話になっていますキョロキョロ





大宮妄想小説です

BL要素含みます

パラレルです






side O







初めて彼を見たのは、学校帰りのバスの中からだった。




俺は『Tendre』という有名パン屋の社長の息子として生まれた。

だからといって、将来は必ず父親の後を継がなければいけないわけではなかった。

何故なら、元々小さいパン屋から始めた父母は、社長業は窮屈だから自分の好きな事を見つけて、好きなように生きてほしいというのが、俺への望みだったから。




小さい頃は俺にもそれなりに夢があったのかもしれない。

でも、父の会社が大きくなっていくと、どこに行っても社長の息子という肩書きがついてまわってきて。




何をするにしても、理想の息子を演じる事を考えるようになってしまった。

そのうちに自分の素直な気持ちではなく、こう答えると大人は「さすが、『Tendre』の社長のご子息だね」と喜ぶような答えを返すようになっていっていたんだ。




高校1年の時に、家族から離れて「一人で出店候補地に引っ越して、生活しながら立地調査や客層の調査を行いたい」と言った時には、流石に父母は反対した。



多分父母は、それが本当に俺のやりたい事ではないと気づいていたんだと思う。

それでもその時の俺には、それ以外やりたい事なんて他には全く無かったから、それが俺のやりたい事なんだって思いこんでいたんだ。



父母を説得して俺は一人暮らしをして調査を行う事ができるようになったんだけど、ひとつだけ条件がついていた。



それは、翔くんを秘書兼仕事のパートナーにするというものだった。



翔くんは母の兄の息子で、少し歳は離れていて小さい頃は良く遊んでもらった。

家庭教師もやってもらった事もあって、気心が知れているし、俺を理解してくれていて、俺が心を許せる数少ない人の一人でもあった。

それに、翔くんは既に何年も『Tendre』で働いていて調査のノウハウを教えてもらう事もできる。


だから、その条件は俺にはむしろ有り難かった。



翔くんにもプライベートは必要だから同じマンションの別部屋に住む事にしていたんだ。

ただし、何かあった時のために、部屋を自由に行き来出来るようお互いに合鍵は必ず持つようにした。

そして高校は変えられないから、通える範囲内で引っ越しを繰り返した。



翔くんのお陰で、俺の調査は的確だと評価された。

ただ、評価されても特に感情が動く事はなく、そんな自分が分からなくなった。




俺のやりたい事は、これではないんだろうか?




そんな無感情で無機質な俺に彩を与えたのは、彼だった。







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