大宮妄想小説です
BL要素含みます
パラレルです
side N
流れた噂は、うちの近所の空き店舗に『Tendre』のパン屋が出来るというものだった。
『Tendre』はこの辺に出店したくて、新店舗を出すなら、競合するうちをまずフランチャイズ化する方が経費も抑えられると踏んだのだろう。
でもうちが頷かなかったから。
「『Tendre』がこの辺に出店するって噂、聞いた?
『Tendre』が出店したら、うちの経営も危ないかもね」
雪かきの後にイートインスペースで智くんに訊ねたら、智くんは酷く驚いた顔をした。
「それ、ただの噂じゃないですか?」
「そう思いたいんだけどさ、最近『Tendre』の人がうちにきてフランチャイズ契約しないかって……、勿論断ったけど」
そこまで言ったら智くんはいきなり立ち上がった。
「智くん、どうしたの?」
「あ、俺、忘れ物したんで、一度家に帰ります」
そう言うと、智くんは店から出ていってしまった。
あまり話せなかったけど、閉店後に会えるから良いかって思って、俺は普通どおり開店準備をした。
その日、閉店間際に息を切らせた智くんが飛び込んできた。
「和さん、ちょっと話したい事があります」
「ん、もうすぐ閉店するから、イートインスペースで少しだけ待ってて」
それでも早く話したそうで、智くんは俺を見つめたまま足がイートインスペースに向かわない。
「どうしたの?急ぎの用事?」
そう訊いたら神妙に頷く智くん。
そのいつもと違う様子に不安になり、お客さんも居ないから、とりあえず話を聴こうと思った途端に山下さんが勢いよく店に入ってきた。
山下さんは智くんを見るなり顔を顰めた。
「なあ、ニノちゃん、『Tendre』の出店の噂聞いた?
こんな近くに出店なんて営業妨害だよな?」
「山下さん、それはまだ噂だから」
「いや、俺は本当だと思うけどな!
なぁ、本当なんだろ?
『Tendre』の社長ご子息の大野智くん」
「えっ……?」
智くんが『Tendre』の社長の息子?
驚いた俺の顔を見て、山下さんは得意げに笑った。
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山下さん覚えてます?
4話ぐらいに出てきた近所の商店の嫌な奴です(←雑な説明笑)
自分でも山下にしたか山本にしたか分からなくなったぐらいな奴でしたが