大宮妄想小説です

BL要素含みます

パラレルです







side N







「和、最近楽しそうだな」






早朝、パンの仕込みをしていたら父さんが俺にそう言ってきた。





「そう?」






「生地をこねるのなんて、しんどいって昔はぼやきながらやってただろ?

それに、新作なんてなかなか考えられないってぼやいてたのに、最近は新作がぽんぽん生まれてるだろ」






確かに、結構な重労働だから、ぼやきながらやっていたんだけど。

新作も、なかなか良いアイデアが浮かばなくて、父さんの厳しい審査を通るものがなかったんだけど、最近は立て続けに店に置いて良いってオッケーが出てる。



これも智くんのおかげなのかもしれない。

こねる時からずっと智くんに食べてもらいたいって思ってるし、美味しそうに食べてくれる顔が見たいって思ってて。

新作も、智くんと一緒に味や形を考えてるから楽しいんだよね。






「パンを食べてもらいたい相手が出来たからかな」







「へっ!?」








「父さんも、母さんに食べてもらいたいパンがいっぱいあったんだよ」






少し切なげに目を細める父さん。

そういえば、母さんが亡くなってから父さんは新作を作っていない。

そして母さんの一番好きなパンはメロンパンだった。






「和にもそういう人が出来たって事だろ?」






確かに、智くんに作ってあげたいし、俺にとっては智くんがそういう人なんだと思う。

ただ、父さんはそれをわかっていて言っているんだろうか?

男同士でしかも高校生にそんな気持ちを抱いているなんて、父さんはどう思うんだろう。






「俺……」






父さんを真っ直ぐ見つめられなくて瞳を伏せる。






「和、父さんは和が本当に好きなら、性別とか年齢は気にしない。それに和の人を見る目が確かだって信じてる。

母さんも同じ考えだったよ。

だから父さんの事は考えなくて良い。

自分と相手の事だけを考えなさい」






驚いて父さんを見た。

父さんは穏やかに笑っていた。






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