大宮妄想小説です
BL要素含みます
パラレルです








side N








緩んだ腕の力に気づき、顔を見る。
絡み合った視線に、心臓が騒めく。
マスクにかかる指。


キス……される?



それは流石に自分の気持ちがはっきりしていないうちはダメだって、流されてして良い事ではないと理性が働く。


それに、智さんに性別の事を打ち明けていないのに、そんな状態でキスなんてしてしまったら、後から智さんを苦しめるかもしれない。


それは絶対ダメ……。


指を避けるように智さんの肩に顔を埋めた。





「ごめんなさい、私……」





「俺こそ、ごめん。君の気持ちを無視するところだった……」




優しく頭を撫でる感触。

俺の気持ち…。

でもさ、例え俺の気持ちが好きか嫌いか定まったとしても、どちらにしても、智さんと俺には一緒に歩む道がない。

だって、智さんが好きなのは「女」の和さんなんだから。


ズキッて胸が痛む。


考えに気持ちが沈んでいきそうになった時、そこに満ちてきたのか、波が足元を激しく濡らした。
いきなりの事に、2人して驚いて声を上げた。




「わっ」




驚いて足元を見ると、スカートの裾は濡れ、智さんは裾を捲っていた部分まで濡れていた。




「また来たっ」





慌てて、波から逃げようとして、砂浜に足をとられる。
転んじゃうと思ったら、いきなりの浮遊感。




「セーフ」




智さんに思い切りお姫様抱っこされていた。
俺、同じくらいの身長なのにっ!?

智さん、細身なのに、どこにそんな力があるんだろう。
腕に感じる硬い腹筋の感触。
凄い割れてそう……。
ぽにょ腹の自分がとても恥ずかしくなった。


そのまま砂浜を歩く智さん。




「智さん、もう大丈夫だから、重たいし……」





「えっ、全然軽いよ」





砂浜だから、余計に重く感じるはずなのに、智さんは普通に歩いていて。
表情も変わらない。
あっという間に、木陰に到着した。




「すみません、ありがとうございます」




おろしてもらうとすぐに頭を下げた。




「全然、大丈夫だって」




智さんは笑って頭を撫でてくれた。
いつも智さんに頭を撫でてもらうと安心する。
本当に大きくて優しい手。
手だけじゃなく、心が優しいからなんだろうな。




「あんまり見てたら、また襲うかもよ」





口角を上げて笑う智さんに、俺はまた猫パンチを食らわせてやった。











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