大宮妄想小説です
BL要素含みます
パラレルです
side N
「じゃあ、始めようか」
そう言った櫻井さんが、手を繋いだ俺たちを見て驚いたようにくりくりの目を見開いた。
「あの、大野さん、手……」
軽く揺すって離してもらおうとすると、大野さんも櫻井さんの視線に気づいたのか、そっと離してくれた。
手首に心臓があるみたいにドキドキしてた。
俺、まだ真っ赤なんだろうなと、何だか居た堪れない。
「ごめんね」
また優しく頭を撫でて、大野さんは座った。
俺も座ると、顔合わせと打ち合わせが始まった。
終盤を迎えた頃に、櫻井さんが申し訳なさそうに言った。
「あっ、最後に一つみんなにお願いしたい事があって」
「翔さん、何?」
「智くんと話してたんだけど、みんな、自宅で出来る仕事もあると思うんだけど、何か疑問だったり、閃いたり、ここを直したいって時に直ぐに会議室に集まって、顔を見て話し合えるようにしておきたいんだ」
「悪ぃ、俺が、オンライン会議苦手で……」
大野さんは、顔とか、その場の雰囲気とかしっかり見ながら仕事をしたいという。
オンライン会議では、気持ちの温度が分からなくて苦手なのだという。
「一緒に一つの作品を作るから、イラストもみんなの意見を直に聞きながら描いていきたいんだ」
「それは俺も大歓迎。智さんの仕事も見てみたいし、やっぱり直接顔見て話したい」
「俺は大体出社してるから、大丈夫。
雅紀も毎日出てるから大丈夫だよな?」
まーくんが困ったように俺をみていた。
出社しているまーくんには反対する理由はないだろう。
確かに、コミュニケーションをとりながら一緒に作った方が良いものが出来そう。
Satoさんの仕事を間近で見られるのも魅力的。
俺だって、みんなを騙してるんじゃなかったら二つ返事でオッケーするのに……。
なかなか返事を出来ないでいると、みんなが此方を見ていた。
「和乃さん、在宅中心だよな……」
「一人の方が捗るんだよな、花粉症も辛そうだし」
そうなんです、一人で在宅でって
今、言ってしまえば、みんなも納得してくれると思うのに、後ろ髪引かれて言えなくて。
「ずっとみんなで居なくても、同じ社内に居てくれたら嬉しいな」
眉を下げて、ちょっと寂しそうに笑う大野さんを見ると、もう――
「分かりました、出来る限り出社します」
そう答えてしまっていた。
という事で、俺たちのプロジェクトチームには、部屋が与えられ、必要機材などが運びこまれる事になった。
一人でも集中できるようにそれぞれ作業部屋もあり、全員で集まれるミーティング室もある。
入口から入るとまずミーティング室。ミーティング室の奥に通路があり、そこに、それぞれ作業部屋。
その奥には給湯室なども完備されていた。
「和ちゃん、大丈夫なの?」
「個室もあるし、何とかなるでしょ」
コソッと心配そうに聞いてくるまーくんを安心させるように笑った。
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