夫が昏睡状態となってから数日がすぎた頃、病院から今後の治療の方針と説明があるので、来院してくださいと連絡を受け、義両親と私の3人で病院へ向かった。

 

K医師がICUで待っていた。相変わらず意識のない夫に面会した後、説明に入った。

K医師「近々エクモの離脱にチャレンジしようと思います。理由は2つあります。

1つは心臓も立ち上がってきてるので、チャレンジできるという事と、もう1つは離脱せざるを得ない理由があります。それは、貧血です。どこかの臓器、ストレスもかかってると思うので、胃や腸、鼻血なども出てますが、離脱して全身を調べて出血原因を探ります。脳の出血という可能性はないと思います。脳の場合、ここまで急激に貧血の数値が一気に上がることはないので、、、。」

 

私たちはその説明に希望と期待が膨らんだ。

“夫が戻ってくる!“

“目を開いて私たちを見てくれる!“

“酷い目にあったよ、心配かけたね“なんて言うかも。

 

義母も「鼻血が原因だわ!あの子小さい頃からよく鼻血出してたのよ!」

そう言って明るい顔になっていた。

義父もとりあえず良かった。という雰囲気だった。

 

実家に戻って実両親、心配をかけていた夫の友人達、恩師、色々な人から連絡も来ていて、エクモ離脱にチャレンジすると説明できて嬉しかった。

 

その夜も実家の座敷に布団を敷き豆電球にして、子供を寝かしつけながら私は希望に溢れて子供に言った。

「パパもうすぐ、元気になるからね!パパ今ものすごく頑張ってくれてるからね!」

私は子供が「やった〜パパに会いたい」のような反応をするかと思っていた。

しかし子供は誰もいない暗い空間をじっと見つめながら一言も話さず黙っていた。

 

どうしたのかな。と思いながらしばらく子供の様子を見ていたが、いつもはおしゃべりな子供がこんなに長い間、一言も話さないなんて、と思いとうとう子供に「どうしたの?」と聞いた。

 

すると子供はただ一言、、、。

「怖いなって思ったの」

 

一体子供は何を見ていたのか。今にして思えば子供はこの時すでにわかっていた。本能的なものなのか、第6感ともいうべきなのか、わからないが事態は決していい方向には向かっていないと。

 

そこには到底受け入れられない現実が待っていた。

そして“虫の知らせ“の本当の意味がわかったのは、この時のことだった。