こちらではテレビがなく、また動画をストレスなく観られるほど自宅のネット回線も速くないので、よく日本のラジオを聴いている。といっても、一部の録音をインターネット経由でダウンロードするPodcastになる。

留学でもしない限り、ラジオを聴く機会がくるとは思ってもいなかった。
これまでずっとメディアの主役だったテレビさえ陰らせたインターネット、特にソーシャルメディア(ブログ、フェイスブック、ツイッター等)の爆発力はすさまじく、情報に困ることはないからだ。日本の情報を知ることに不便はないし、留学生間のコミュニケーションもフェイスブックによってあっという間に広がり、むしろ情報過多な位だ。

一部の専門家にのみ制限されていた広く伝えるという行為が、技術革新によって開放され、今や視聴者全員がプロデューサーでありジャーナリストである。
ビジネスマンの間で長らく君臨してきた日経新聞でさえ苦戦を強いられている。情報を網羅するにはそのサイトのヘッドライン程度で十分だし(最近は一読しただけでは内容を把握できないようになったようだが)、より深い情報を知るには、ブログ等で専門家の生の議論を読んだ方がよっぽど迫力がある。これは世論の多様化にもつながる。

そんな中でのラジオへの回帰である。最近よく聞くのは、「安住紳一郎 日曜天国」と「鈴木おさむ 考えるラジオ」だ。
「日曜天国」はTV局随一の人気アナウンサーが軽快なトークで自分を惜しげもなく晒しだすところが面白い。テレビでは窺い知れなかったその人となりを十二分に知ることができる。これはおそらく以前から指摘されてきたラジオの良さであろう。
「考えるラジオ」は人気放送作家が、文字通り考えさせるテーマで視聴者に挑む。例えば「夢をあきらめる」を考える回では、15年間、才能があると言われながらも下積み生活に甘んじてきたお笑い芸人が夢破れて実家に戻る引退の日にゲストに迎え、赤裸々な告白を聞いて考えさせる。これもラジオの良さを生かした番組と言える。また、同時に、鈴木おさむの話に含蓄があり惹きつけられる。けっしてカッコいいものの言い方をするわけではないが、これまで体当たりで得てきただろう知恵と経験がその語り口に滲み出ている。さすが引っ張りだこの放送作家の実力だと思い知らされた。

よりバーチャルな世界へと引きずり込んでいくインターネットソーシャルメディアの世界と、より人間臭い等身大の告白の対比に、今後の住み分けの可能性がより具体的に見えた気がする。