お気に入りだったリラックマのマグカップに、その液体を落としてみる。
あ。確かにオレンジ色。お湯の上でゆらりと漂う。
「なんかこれって、機械とか?いるんじゃないですか」
「キカイ?…ああ。こういったアロマランプを使って香らせるのが一般的ですね」
白い陶器の器具をしめしながらショップのお姉さんは微笑んだ。
「でも、まずは簡単な方法でお楽しみいただけますよ」
お姉さんの教えてくれた方法はふたつ。
ひとつは、マグカップにお湯を入れてそこに精油を落とす方法。それだけでも、
精油が温まってふんわりと香るらしい。
もうひとつはティッシュに落として香る方法。デスクや枕元なんかにいいらしい。
それならできそう、と安心した私はスイートオレンジの小さな箱を持ってレジへ向かった。
リラックマのカップは、ふちがほんの少し欠けてしまっている。タクトから初めてもらった
プレゼントなのに。使うのも捨てるのも気が向かなくなってしまって、デスクに置いたまま
だった。
タクトはもうすぐ院試でピリピリしているようだった。メールも、そっけない。
精油と一緒に入っていた小冊子には、アロマテラピーの説明が簡単に書かれていた。
お風呂?塗る?そこまではちょっとめんどくさいな、と思いながらベッドに横たわった。
「芳香浴」っていうのか、こういうの。香りを浴びる。かっこいいかも。
両手と両足をぐーん、と伸ばしてみた。ふっと力を抜くと、カラダにあったかい血が流れる。
今日はこのまま眠ってしまうことにした。