ひとつ前の記事には、ここ数ヶ月にあった出来事のうち、主に義母の事を書いた。しかし、悩みはそれだけではない。彼女とのこれからの生活をどうするか。再婚するのかどうか、そちらの方が遥かに重要な課題だ。

小学3年生の娘を連れての再婚は、普通に考えても一筋縄でいかない。彼女は年下で、これまで結婚も子育ても、一度も経験がない。独身だった女性が、いきなり妻と母の二役を同時に始められるものかどうか。

実はそれをもう試しており、結論も出ていると書いたら、記事を読まれている方は驚かれるだろうか。

僕らの出した結論は「再婚しない」である。

先月、3月8日の夕方、僕と義母が、何度目かになる口論をした。義母は、もう明日からは手伝いに来ないと言って、帰って行った。

当面の問題は2つあった。

・朝7時35分、登校する娘を通学班の集合場所まで送り出すこと。
・夕方4時半、学童保育にあずけている娘を出迎えに行くこと。

これらを、ずっと義母にしてもらっていたので、代わりに誰かがやらねばならない。

朝も夕も微妙な時間なので、僕が仕事をしながら行うのは難しい。3月時点ではまだ小学2年生だった娘に、一人で鍵を掛けて登校させるのも少々不安だ。また、学童保育は、迎えにきた保護者に子供を引き渡すルールになっており、子供一人では帰らせてもらえない。施設の責任に関わるのだろう。

僕は無理を言って、その日の夜に彼女を迎えに行き、家に来てもらうことにした。そしてそのまま彼女と同居を始め、娘の送り出しと出迎えはもちろん、妻と母の二役を2週間強こなしてもらったのだ。

あらためて文に書いてみると、我ながら驚く。何という強引さ、急転直下振りだろう。

言い訳にもならないが、その少し前に、結婚を前提に同居を始めようと彼女と話し合っていた。娘が春休みに入る頃、3月20日頃から始めてはどうかと言っていた。その予定を早めてお願いした形だったので、前触れもなく急に押し付けたわけではない。と言ってもやはり言い訳にしかならないのだが。

彼女と同居し始めた後の2週間は、僕にとっては久しぶりに心底楽しい時間になった。ティーパーティーと言って、夕食後に3人で、コーヒーやお菓子をつまんだ時間の幸福感は、忘れられない。

が、そうそう上手くは行かず、2週間が過ぎた頃、彼女に、「通い婚」形式にしたいと言われた。自宅に帰って一人の時間を持ち、朝、夕、手伝いに来る。娘の送り迎えに穴は空けないからという提案だった。

僕は、この楽しい時間がこれからもずっと続くと思っていたので相当ショックを受けた。また、娘に話して、大泣きさせてしまった。

彼女の心中の本当のところは彼女にしかわからず、僕が詳しくここに書くことは控えたいが、想像以上の育児の大変さに直面し、安易に考え過ぎていたと思い直したのだろう。

幸い娘は、春休みに入る時期だったため、僕の実母のところにしばらくの間あずけることにした。

その間に彼女と僕は、かなりの時間を掛けて話し合った。再婚できないなら離別かと言った話にもなり、冷静な話し合いだけでは済まず、気持ちが相当に落ち込む日もあった。

僕は、彼女に本当に求めるものは何か、自分なりに整理してみた。

◆娘の送り迎えをして欲しいのか?
違う。仕事としては必要だが、本来誰がやってもいい、どうでもいい仕事だ。彼女でなければできないことではない。

◆家事や育児をして欲しいのか?
違う。家事や育児は、不十分ながら自分にも出来る。

◆では何が欲しいのか。
一言で言えば会話だろう。僕と娘の2人だけの家族はあまりに寂しく、会話もまるで広がらない。休日に出掛けても楽しみがない。そこに彼女に加わってもらうと、華やぎ幸せになる。

娘に、会話を与えてあげたい。付け加えれば、どこかに出掛けるときに、家族のような雰囲気を味わわせてあげたい。それらは、娘に与えてあげたいのと同時に、僕が切望しているものでもある。

出来れば、同居して毎日それを手に入れたい。しかし、それが難しいなら、週末だけでもと考えた。

娘は、泊りがけでUSJやディズニーランドに行きたいとしばしば言っている。叶えてあげたいと思うが、娘と自分の2人だけでホテルを予約するのが何とも侘しく、なかなか実行に移せずにいる。仲の良いお姉さんでいいから、そんな時に彼女に加わってもらえたら。

求めているもののかなりの部分は、それで埋まるような気がした。それを彼女に伝えた。「通い婚」でなく「週末婚」の方にしたい。

もう一方で、今回つくづく思ったのは、日常生活で普段から人に頼るのはリスクが大きいということだ。それまで、当たり前のように義母に育児を手伝ってもらっており、それでさしたる支障もなかったのだが、一旦、義母の機嫌を損ねたらそこまでだった。明日から来ないと言われれば太刀打ちも出来ない。

やはり基本的に、自分だけで完結して育児を行っておき、何かのときに誰かに手伝ってもらうくらいの形でなければ、いざの時に身動きが取れない。それを思って、彼女から提案のあった「通い婚」も断った。彼女が毎日通ってくれることを前提に、その好意を当て込んで生活を組み立てておくと、いずれ無理が生じた時に立ち行かなくなる。

考えてみれば、昨年妻が亡くなった時点で、義母に頼るのはやめ、僕が一人で育児をするようにすべきだった。義母との間柄は血縁でもないし、妻がいなくなったことで、義理の関係も薄まっていたのだから。僕が一人で育児をしていれば、彼女のことを早期に紹介することもなかったし、これ程に揉めなかっただろう。

恋愛も再婚も、自立した日常を送った上でなければ成り立たないのだとあらためて思った。ひとつ前の記事のタイトル「娘を一人で育てる。」は、そういう意味だ。

一人で育て、そのベースの上に、オンする形で彼女に加わってもらう。娘は、すごい速度で成長し、この先関係性がどう変化するか分からない。関わってもらうことと離脱することが、できるだけ容易でなければ摩擦で疲労するだろう。

結婚、同居というフォーマットに比べると、変化に対応しやすいが、逆に言えば安定性がない。正直、僕の心の中にも未来への不安は結構な割合で残っている。

が、現状においてこれが最善と考えた。考えて、自分で納得するのに数週間を要したが。

再婚はしない方向で、この先に進む。