玄関の前に並べた大量の袋。昨日と今日で、妻の衣類をかなり思い切って袋詰めし、古着として廃棄させてもらった。


妻は今、一人で介護ベッドで寝ているが、これからは添い寝も必要になるだろうし、設備の類を置くためにもスペースは必要だろう。

部屋を広く使えるようにするためには、場所を取っている衣類を捨てるしかない。

意を決して、上の写真の他、バッグの類をもう一袋まとめ、45Lゴミ袋、計11袋分を廃棄した。優に人一人寝る分の容積はあるだろう。

以前からやりたいと思っていたが、人の荷物を捨てるのは忍びなく、なかなか手が付けられなかった。しかし今回、しぶる妻を絶対必要だからと説得し、無理やり合意してもらった。

わが家では、先週からこれを「代執行」と呼んできた。いわゆるゴミ屋敷処分の「行政代執行」だ。

「この3連休に、代執行するからね!」

何度も宣言して、妻を震え上がらせてきた。

とはいえ本当に勝手には捨てられないので、目の前で手に取って、妻にいる、いらないの判断をしてもらいながら処分したのだが。

衣類の置かれていた部屋は、介護ベッドを置いた部屋と続き部屋になっていて、これまでほぼ全体が荷物置き場になっていた。

節分の豆まきのときには、棚の間を縫って歩かなければ窓まで辿りつけず、

「こういう状態を「足の踏み場がない」と言うんだよ」

と小学一年生の娘に教えていたものだ。

その荷物部屋が、最低限の棚を残してほぼ全面使えるようになった。



この代執行のために3連休の間、娘を僕の母のところにあずけたりもしており、これで目的が果たせなかったら、妻にも母にも娘にも申し訳がたたなかったところだが、何とか方がついてホッとした。

妻は、知り合った頃から服を買うのが好きだった。年の初めにはしばしば福袋を買って、当たったの外れたのと、喜んだり悲しんだりしていたものだ。

適価で欲しいものだけ買えばいいのにと言うと、必ず、

「私のする唯一のギャンブルだ」

と言って、逆らえない強い意志を示し、ああ男性には踏み込めない領域なのだなと感じさせられてきた。

子供が生まれ、グッとお金を節約するようになってからも、少ない小遣いで古着屋をしばしば覗いて細々と買物していた。

片付けをした僕からみると、部屋が広くなって良かった以外の感情はないが、妻は寂しく思っているのだろう。代執行の話に付き物の、心淋しさを感じずにはいられない。

そんな風にして片付けがちょうど一段落した頃、義母から連絡があり、一転、気持ちが重くなった。

詳しくは書かないが、コロナウィルスの件以来、義母は、昼間ずっと娘の世話をしてくれてきた。

その義母が、やはり相当負担だったのだろう、珍しくひどく後ろ向きなLINEを送ってきて、その後電話でも話したが、かなり思い詰めているようだった。一応、電話の終わりには落ち着いたと言って下さったが。

今回の3連休、娘がいない中、代執行をしながら妻と2人で過ごしている。

ずっと仕事にいかず、このまま2人で過ごすなら、いつまででも手助けしていけるのにと思ったが、現実には昼間は仕事に出掛けねばならず、並行して育児もしなければならない。僕一人の力ではどうにもならず、できることは限られている。

代執行の次に何が出来るだろう。

明日は3連休の最後で、娘が帰って来る。広くなった部屋に驚いてくれると嬉しい。