朝は忙しいとよく言われるが、わが家は夜も忙しい。

仕事が終わり、定時で帰ると18時10分頃に家に着く。ワイシャツを脱いで着替えたら、まず妻の胃ろうに食前の薬を入れる。栄養注入の30分前に入れたいので、何より最初に済ませねばならない。

次に痰の吸引。カフアシストで痰を引き上げ、吸引機で吸い取る。調子の良いときはササッと済むが、喉の奥に痰が絡んでなかなか取れないときなど時間がかかることもある。

口腔ケア。口の中をスポンジブラシと歯ブラシで掃除する。上顎や舌の上に、痰のカスがかさぶたのように張り付いていて気の毒だ。朝にもケアしているが、その後カスがたまって、おそらく何時間も気持ちの悪いのに耐えていたのだと思う。ブラシを何度も拭いたり洗ったりしながら少しでも口の中を綺麗にする。

そこまで済んだら、少し家事をする。娘の夕飯の食器を洗い、自分の弁当箱も洗う。ゴミを集め、茶を沸かし、翌日のための炊飯などもする。

そうしている間に30分以上過ぎるので、今度は妻の胃ろうに栄養を入れ、続けて食後の薬も入れる。

栄養注入が終わったら、自分も夕飯をかきこんで片付ける。

ここまでで大体1時間かかってしまう。

次に妻の入浴を手伝うのに、20分強。
さらに風呂から出たあとの色々で30分強かかる。

身体を拭き、緑内障の目薬など2種類の目薬を差し、痒みのあるところに薬を塗り、筋肉痛の箇所に湿布を貼り、胃ろうボタンの部分に薬を塗ってガーゼをはさみ、髪を乾かし、顔にクリームを塗る。

鼻水を吸引機で吸って点鼻薬を差し、リップクリームを塗り、ハンドクリームを塗り、寝る前の薬を胃ろうから入れ、もう一度痰を吸引し、指が曲がらないようにサポーターをはめる。

最後に娘を呼んで、家族3人で薬師如来様の御札にお祈りすると、妻は床に就く。

クリームを塗って、湿布を貼ってと、ずいぶん細かく書いたが、人の手助けをするためには、そのくらい細かく意識して覚えておく必要がある。

自分のことなら思い付いた順、したい順に適当にすればいいし、例えば朝起きてから何回トイレに行ったか、何回鼻をかんだか、いちいち覚えていないように、さして意識もせず、よそ事を考えながらでもこなすことができる。

しかし、人の手伝いは無意識にはできず、あれをしてこれをして、忘れないようにと、ひとつひとつを意識する必要がある。妻の身の回りの手伝いをするようになってあらためて感じたことだ。

話がそれたが、そうして妻の手助けを一通り終え、時計を見ると、帰宅から大体2時間が過ぎ、8時をまわっている。

この後、小学一年生の娘を風呂に入れ、髪を乾かし、宿題をさせるのに1時間半かかる。

洗濯機が止まるのを待って洗濯物を干し、風呂を掃除すると10時半から11時になる。

最近、起床時間を少し遅らせ、4時半にしたが、それにしても急いで寝なければ朝が辛い。

判で押したように毎日同じことをしているが、いつも定時に帰れるわけではないから、スタート時間は遅れることもある。

加えて、途中途中に娘が何かをせがんできたりするし、痰の具合が良くないなど、思い通りにならないこともある。それらの遅れは、そのまま就寝時間の遅れになり、睡眠時間が削られる。時間との戦いだ。

普段は、少しでも早く済むよう、休みなくこなしているが、一昨日の金曜日、途中でふと15分だけ休みたいと思った。

定時で帰ってきて、比較的時間が早かったし、翌日は土曜日で、朝多少遅れても困らないし。

妻を寝かしつけたあと、ソファに座ってスマホを触り、しばらく休んだ。

一昨日の夜、一つ前の記事にコメントを付けてくださったお二人に、返信コメントを打ったのが、午後8時過ぎのこと。ちょうどその休憩中のことだ。

このくらいの時間の余裕があると有り難い。

数年前僕は、かなりの時間数の勉強をして、作業環境測定士全種、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等々の資格を取った。

子育てで忙しかったが、時間というのは隙間を利用して自分で作るものだ、時間がないと言うのは言い訳だ、などと思っていたのだが。

最近は、その頃と比べても比較にならないほど厳しい。15分を切望するほど時間がない状況もあるもんだなと痛感させられている。

幸い土日は、少し余裕があるので有り難い。午前6時を回ったが、娘はまだ目覚めずに眠っている。

もうしばらく、本当に15分でも寝ていてくれると楽なのだが。