朝、娘が出かけた。洗濯ものを外に干しに出たら、ふわりと金木犀の香りがした。隣にある主人の実家の庭を見たら、金木犀が咲いていた。


秋の深まりを感じた。


通勤途中、そこかしこで金木犀がオレンジ色の小さな花をつけ、かぐわしい香りを漂わせていた。


私は、ひとつの出来事を思い出した。


まだ、暑い頃、お仕事で訪れるおうちの地図を見ていた。その地域では、同じ姓のおうちがたくさんあって、わかりにくかった。


出かける前に、訪問するお宅に電話をかけて確認した。


概ねの目安を見つけることができた。


電話の主は、


「うちの庭に、金木犀の木があるから、それを目印に来て頂戴。」


そう、指示された。


約束の時間に着くように出かけ、おおよその目安をつけたおうちの庭に入って行った。


間違うことなく、その家にたどり着くことができた。


用事が済んで、帰りに庭をぐるりと見回した。


目印にしてと指示された金木犀の木は、葉が茂りすぎたのか、小さく刈り込まれ、秋でもないので花をつけているはずもなく、その木が金木犀だとは、気づくことが難しいありさまだった。


帰路について、思わず苦笑した。そのうちでは、誇りとしている金木犀も秋でもなければ、目印にも何にもなりえないと思った。


職場に帰り、同僚にそのことを話したら、みんなあきれている様子だった。


金木犀って、花が咲いて香りがしないとなかなか気づいてもらえないのかもしれない。