日本へのワインの輸入量がどう推移しているのかが気になって、調べてみました。

メルシャンさんのHPには毎年動向調査資料 がアップされていて、先ずはこちらを参考にさせて頂きました。品質管理面では悪評高いこちらの会社ですが、この辺の情報整理は有難かったです。

財務省が公表している日本貿易統計資料 からの抜粋のようで、この資料における「第4部 第22類 飲料、アルコール及び食酢」の統計番号「22.04.21.020 」がこれに該当していました(ちなみにスパークリングワインはこの中に含まれず)。

メルシャンの資料は結構数字の誤記があって、全部見直して財務省の資料が存在した1988年からの推移をまとめ直したのがこちらになります。

 

ワインのきらめき ~我が家のドリンキング・レポート~-国別輸入数量推移  

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1998年の異常とも思える(前年の2.4倍)輸入量は、今思えば何だったのでしょうか。メルシャンの資料のトップを飾るグラフは「ワインの消費数量推移」。この推移を見る限り、98年に輸入されたワインの半数は闇に消えたかのようです。
 
キリの良い年度毎の推移表にして、10年前との数量比も加えてみました。

 

  国別輸入数量の変遷(5年毎)

ワインのきらめき ~我が家のドリンキング・レポート~-国別輸入数量推移

  財務省発行「日本貿易統計」より。

 

90年代はイタリアの、ここ10年では、チリ、スペインの躍進が際立っています。チリを始めとする南米勢は大手メーカーの取り扱い開始が理由なのでしょうが、スペインは?という気がしました。ただ大阪に度々行くようになって知りましたが、北浜近辺を筆頭に一大勢力として確立されているのを感じます。そして昨今は東京においてもあちこちにバールが点在し始めている。

 

逆に減少著しいのがドイツワイン。10年前の4分の1ですか。

ドイツワイン自体の問題というよりも、仏料理、伊料理、そしてスペイン料理といった、その国の食事と共に楽しむ土壌がここ日本で育まれていないのが最大の要因のような気がします。

ただこういう状況が、今年度のソムリエ試験の出題範囲からドイツワインが除外された理由だとすると、実に嘆かわしい事です。
もはやメルシャンの資料でも随分前から「その他」の中の国でしかないギリシャ(昔はブルガリアと共にちゃんと載っていました)が対象で、ドイツが対象外?

 

ドイツワインフェストで挨拶もされていた日本ソムリエ協会の名誉顧問でもある熱田貴氏にこの件を尋ねてみたところ、


「ソムリエ試験も全ての国を勉強するのは大変だから、毎年どこかの国を外しているんですよ。(来年はまた別の国が外れるんですか?との問いに)ええそうですよ。たまたま今年は伝統ある国が外れたんで色々言われてますけど、来年はイタリアが外れるかもしれませんよ、アハハ(笑)」
 

だそうです。

 

 

ワイン好きのはしくれとして、ソムリエという職業にだけは就きたくないと常々思っています(勉強嫌いなんでそもそも受かる訳ないですが)。

だって、自分が好きでも無いワインの勉強までして、お客の好みに合わせてこれまた自分が好きでも無いワインを勧めなければならないなんて、考えただけでゾッとします。カベルネが苦手な今の私であれば、ボルドー好きのお客に好みのカベルネをセレクションしてあげるなんて、もうあり得ない!

 

その一方でマクシヴァンのオーナーのような、真のソムリエと称えるべきワイン遣いから素晴らしい啓示を与えられ至福の時を過ごせる事もあったりして、敬服する事もしばしば。

自分が好きなワインのみ掘り下げるのはやはり単なるワイン好き。ワインという高貴なるお酒を司り他者に振る舞う為にクリアすべき基準は、必要なのでしょう。

 

でも、今のソムリエ試験は、そういうワインの醍醐味を飲み手に伝える為の大事な何かを備える事を忘れてしまっているような気がしてなりません。三ツ星レストランが何故ジュラのワインを欠かさないか。そういう事を語れない受験生ばかりのような気がしてしまいます。

  

 

私は"文化"という得体のしれない言葉を使う事にとても気が引けてしまうタチなのですが、ワインという酒文化、食文化があるとすれば、それを支える最も大切なものは、ワインそのものの素晴らしさと共に、飲み手との関係性にあると考えています。

ブルゴーニュのワインが素晴らしいのは、彼の地から生まれるワイン自体が魅惑的なだけでなく、それに魅かれたワイン好きが称える言葉の数々が素晴らしいから。ワインと飲み手との類稀なる密な関係。それはまるで男女の間柄にも似たような。

そしてそんなブルゴーニュに魅かれるワイン好きにも惹かれた時点で、此の地のワインがただならぬものである事が初めて証明されることになるのではないかと。

 

そんな世界最高のワインを生み出すブルゴーニュに匹敵するのがドイツワインであると思えるのも、この地のリースリングを愛してやまない飲み手の皆さんの素晴らしいお言葉とその地のワインを愛する情熱に常々触れているからです。

 

そんな"偏った"飲み手達と対等にとは申しません。せめて見下されない為に、大事な事を忘れないで欲しいものです。試験を受ける側も、出題する側も。

 

 

ただよくよく考えてみると、以前自分がお世話になっているインポーターのシェア がどういう状況なのかを確認した際に明らかになったように、所謂大手が輸入しているしょーもないワインなどあってもなくてもどっちでも良い状況です。

それを鑑みると、今も昔もドイツワイン愛好家が愛するワインを飲み続けていて、前述した「しょーもないワイン」の輸入量が減っているだけなのだとすれば、むしろ喜ばしい事なのかもしれません。