落語には必ず登場する定番の役回りがある。
八っつぁん、熊さん、ご隠居さん・・など。
商家なら若旦那さんに大旦那さん、おかみさん、番頭さん・・。
そして使用人の中でもキャリアの短い丁稚の場合、
必ず登場するのが、「定吉」である。
落語では何をおいても「定吉」であり、
真面目一本ではあるものの、どこか融通が利かずに、
天然気味で、ややボケっとしているのが愛すべき定吉のキャラなのだ。
定吉といえば相手をするのは、当然、大店の大旦那さんである。
名作「茶の湯」においても、大店を若い者に譲り今は悠々自適の
身となった大きな商家のご隠居さんが
かつて経験した事のない茶の湯とやら、
今さら人には聞けないし・・。
という事で、丁稚の定吉を使い適当にあたりをつけて
茶の湯の真似事をし、結果ドタバタ騒動となる、
知ったかぶりの素人の悲喜劇が展開される滑稽噺である。
名人圓生や金馬のものが鉄板だが、
ここはあえて、定吉のボケ具合と腹を壊したご隠居さんの
「定吉やーい」と呼びつける、
息も絶え絶えのご隠居さんに、柳家小三治の「茶の湯」を推したい。