その日、上司♂と同僚♀と私の3人で残業をしていた。
普段の作業場は1階だが、2階の事務所での事だった。私は一足先に1人でそこで事務作業をしていた。夜9時を回った頃だろうか。1階から上司と同僚が上がってきて私と同じく事務作業を始めた。
2階の事務所はその奥に社長室・または会議室と呼ばれる個室がある。立派な神棚があり、その真下に主に社長が使うパソコンがある。四六時中、備え付けの小さな行燈(電気)は付けられ、部屋は暗くとも神棚の中だけはほのかに明るい。その部屋は使用中以外はいつもドアが開けられている。私が1人でいる時から開いていたし、上司と同僚が来た時ももちろん同じ状態だった。そして3人で作業を始めて間もなく、奥の部屋から
「カタカタカタッ」
と、明らかにパソコンのキーボードが叩かれる音がしたのだ。実は我が会社、社員全員が2階にいて他は誰もいないはずなのに階下から男性の野太い声で「おーい」と声がしたりする事があった。その時は心霊的なものよりも侵入者の疑いでみんな戦慄したものだが、結局何も無かった。
今回そのキーボードが叩かれる音がした時、上司は「ん?俺らの他にも誰かいるのか?」と問うた。他でもない先に事務所にいた私に対してだが、それに返事をする事が出来なかった。誰もいない事が分かっていたから。そして今の音が私の勘違いではなく、上司にも聞こえていたのが分かったので余計に何も言えなかった。もう1人いる同僚はとても怖がりだ。変に真実を言って怯えさせたくなかったのもある。返事が無い事を深く追及される事もなく、私達は黙々と作業を進めた。
そうして何事もなく、さぁ帰るかとなった時に私は思い切って会議室を覗いた。やはりそこには何もなく、神棚の小さな行燈だけが灯っていた。
我が社で1番の怖がりは社長なので、その社長がよく使う部屋でそんな出来事があった事を伝えたら大変な事になるかもしれないので今だに私の中でとどめられている。
そして、そんな体験をしても私は自分が霊感ゼロを信じているし、1番怖いのは生きてる人間、というのを日々痛感している毎日を送っている。