NHKで「72時間ドキュメンタリー」という番組があります。いつでしたか、
上野の近くの鶯谷あたりの大衆食堂にカメラを据えた番組をやってい
ました。連れ込み宿が多く、うらぶれた大人たちが住んでいる地域だと
ナレーターがいっていました。小太りのフツーのおばさんが同じぐらい
の年配のおじさんと食事をしていました。”失礼ですがNHKの番組なん
ですが、どういったご関係ですか”と不躾な問いを投げかけていました。
すると声をかけられたおばさんが”あたし、このひとに拾って貰ったの、

再婚して3度目よ”と口にしていました。おばさんは”このひとと一緒にな
って4、5年かしら今が一番幸せよ”とシワに埋もれた目が嬉しそうでし
た。つぎのターゲットはなぜか下半身だけの出演で”若いときはフーゾク
に勤めていたのよ、それがいまじゃフーゾクをやってんの、みんな陽気に
やってるみたいにみえるけど本当は寂しいのよ”と呟いていました。まあ
そんな出会いや人生を歩んでいるひとたちをストレートな質問を投げかけ
て本音を引っ張り出そうとする番組が金曜日にやっています。あたしも、

その番組の真似をしていじめっ子のイメージ満載の強面で如何にも屈強
で腕っ節の強そうな青年とすれ違いました。この青年は私が通う公共施
設の工事現場で汗を流していた青年なんです。で、私はその青年に”カッ
コイイズボンを穿いているけど、なんというズボンなの、それにどうしてズ
ボンの下のほうがぶくっとふくれているの”と不躾な質問を投げかけまし
た。とっさの奇襲に”エッ名前ですか、、トビ、、いやニッカというんじゃない
ですか”と日焼けした肌に真っ白い歯が溢れるような健康的な表情で応え

てくれました。”(ズボンが)下膨れになっているのは工事の現場で両手が
ふさがって、動くときの幅がわかるからなんです”と、いじめとは程遠い、
ひと懐こい顔になりました。そうなんです。ズボンの下が膨らんだ、とび
職が着る日本文化がプンプン臭うカッコイイとび職の青年だったんです。
この好漢で思う浮かべたのは大工で脳梗塞で倒れたお母さんをダンス
の会場に連れてくる優しい青年のことなんですが、見よう見真似で覚え
たダンスをおばさんたちと興じるんです。背が高くイケメンで意外とモテ

モテなんです。(ちょっと意外とだなんて失礼よ、あんたなんかいつも壁
にへばりついているじゃないの)。30過ぎた青年はまだ所帯はもってい
ませんが、真っ黒に日焼けした顔で”ママがいつまでも元気でダンスをし
てくれたら嬉しい”と語っていましたが、晴れた日は仕事があってママを
送れないとぼやいていました。幼い時から母子家庭で母親に苦労して、
育てられたということをしっかり受けとめた好漢に早く一緒にステップを
踏む相棒が誕生するよう見守っていきたい、カッコイイ、青年の物語の
一席でありました。
   
   親心 離れ住む子らに 病む日も無事と書き ぐっさんハイ