私は以前、「東京物語」(小津安二郎監督)を出前したときに映画という
ものは観る年代によって見方や感じ方が違ってくると呟いたことがあり
ます。年老いた両親が都会に出てきてこどもたちと交流する姿に現役
のころは”忙しいときに出てきて”という、こどもたちの目線から、主人公
と同輩になった今、観る映画は”たまに出てきた両親にすき焼きだけで
なく刺身も食わせろと”よという気持ちで観ていました。健さんの遺作「幸
福の黄色いハンカチ」のノーカット版を観て、しみじみ思ったのは、健さん
が演じた女房にたいする扱いや思いが自分にも酷似していたことに気
づいたんです。無口で無愛想な勇作(健さん)が網走刑務所を出所にで
ひさしぶりにシャバの食堂で、コップ一杯のビールをにぎりしめながら
ひと息に飲み干し出来立てのラーメンをかき混ぜながら、ひと口ほうば
り噛み締めていくシーンは前日、絶食してそのワンカットに備えたんだそ
うですねえ。そうして浜辺でこれからどうするか考えていたときに花田鉄
也(武田鉄矢)と小川朱実(桃井かおり)のインスタントアベックが写真の
シャッターを押してほしいと頼んだことがきっかけで車に乗って一緒に旅
をすることになります。安宿で勇作は妻・光枝(倍賞千恵子)や刑務所の
夢をみます。隣りの部屋では鉄也が朱美に迫っています。困った朱美は
”キスだけよ”といい、なんとか窮地を脱しようとしますが、ご馳走をまえに
した鉄也は攻撃の手をゆるめません。とうとう朱美は泣き出してしまいま
す。そこへ勇作が現れて”ほかの客に迷惑だ、やりたかったら表でやれ
”と叱ります。翌日、車内はギクシャクした空気が流れます。鉄也は、
邪魔な勇作を降ろしたくて仕方がありません。それを察知した朱美は”
自分も降りる”と抵抗します。朱美に運転を任せたことで勇作が運転す
ることになります。不運なことに事件が起こって検問に引っかかり取り
調べを受けようとして刑務所時代に世話になった係長(渥美清)と再会
します。ワンカットでしたが寅さんの勢いを感じました。それで勇作がム
ショ帰りということが発覚します。車内では緊張が走り、鉄也は今まで
軽い目線でみていた勇作を畏怖の目でみるようになります。事情を知
ったふたりは光枝の元に帰るべきだ主張して無理に夕張まで連れてき
ます。そうして視線の先には、なんと何十枚もの黄色いハンカチが風に
たなびいていて、勇作はふたりに健さん式お辞儀をして光枝のもとへと
去っていきます。 という物語なんですが、いやあ当時の男って勝手な
ものですねえ。好きになりゃ強引にモノにして前科者になったら光枝さん
が困るだから別れる。それも相手の気持ちなんか無視して一方的に決
めてしまう。あたしゃ、家事見習になった今、カミさんのすごさを実感して
この映画をまともに観れませんでした。
こどもを育て家を守る そんな重責を未経験の奥さんに押し付けて
いる世の男性諸君 「幸福の黄色いハンカチ」をご覧になったら、
如何です 釣った魚に餌をやらなかった会 元代表 ぐっさんハイ