私はエッチ社にお世話になり福岡から江戸に出て、当時の貿易部に移籍
して下手な英語を駆使しながら東南アジアの人間模様を眺めることがで
きました。その話はときどき出てまいりますが、今日の主人公は福岡で
大変お世話になったTさんの話なんです。その方は技術者で持ち込まれ
る修理品を只ひたすら再生させることを仕事に日夜、汗を流してある御
仁です。私が現役の売り子のころ私に”修理は任せろ、俺たちが、てん
てこ舞いするぐらい売ってこい”とハッパをかけられたことがあるぐらい

腕に自信をもった職人気質のひとなんです。そのTさんと再会したのは
現役のバットを置いて素浪人になって骨董品になったポケットサイズの
レコーダー付きのラジオが機嫌を損ね、買い替えも仕方がないかと思
いながら、かってお世話になった事務所を訪ねTさんの仕事場を覗きま
したら、昔のまま修理品と格闘しているTさんが健在じゃありませんか。
十数年ぶりの再会でした。”こりゃ珍しい、帰ってきたのか”という会話
から昔話が続きました。そうして骨董品を手渡しましたら”こりゃ、もう、

部品がなかぞ”といわれ買い替えをすすめられるのかと思いましたら
”いま忙しかけん、置いときない、あとで診とくけん”といわれ失礼しまし
た。数日後、訪ねましたら”おい来たか、やっといた”と顎をしゃくった先
をみましたら骨董品が置いてありました。”みてみない”といわれSWを、
いれましたら鳴るじゃないですか。”やっぱ腕はかわらんですな”とお世
辞をいってお金を払おうとしましたら”要らん、もってけ”といわれました。
後日、こよなく愛されているタバコをもっていきましたら、にやっとしなが

ら”困ったらどうせ俺のところに来るっちゃろ遠慮するな”といわれました
実は出稼ぎ先のマレーシアでも同じような職人と遭遇したことがあります
当時は録画はテープが当たり前の時代で、途中でテープが切れて困っ
ていたときに、そのエンジニアにボヤキましたら”一度診てみましょう”と
いうのでダメ元で診てもらいましたら、なんと繋いだ状態で返ってきたの
です。テープを繋ぐなんて普通は考えられないことなんですが魔法使い
のような名匠が出稼ぎ先の会社にいたんです。私はこんな職人がいる

会社では安心して販売ができると営業に訴えました。エッチ社は技術者
の集団で野暮ったい商品だといわれていますが、使えば使い込むほど
味が出る品だと思います。あらエッチ社の宣伝文句みたいになってしま
いましたが彼らに共通するのは、なんとしても再生させるという心意気を
感じさせ再生させて、よろこぶ客の顔がみたいという想いがチエを生み
工夫をするという、昨今のように使えなくなったら新しいものに買い替え
させるという世相に竿を差す心意気に拍手喝采した小さな事件ではあり
ました。
 
  因みにマレーシアの名匠はなにかと差別のあるマレーシア
  からなんの縁故もない新天地オーストラリアに移住して25年
  になり こどもたちを立派に成人させ奥さんと楽隠居の日々を
  送っている華僑なんです    無芸大食だけの ぐっさんハイ