抗がん剤の点滴投与による内臓、とくに腎臓の機能低下が顕著になり解
毒剤を点滴で駆除することに平行して我流で煎茶のがぶ飲みによる利尿
作用を徹夜で敢行しました。いまも出来る限り腎機能を正常化する作業は
怠りなく継続中です。深夜だれもいない病棟を湯のみ茶碗を抱えながら、
迷惑をかけたくありませんので、トイレで思い切り煎茶のうがいをしたり、
給湯器で煎茶を補給していましたら、年老いた夫婦が現れました。午前3
時ぐらいでした。太った旦那が車椅子に、やつれた奥さんがそれを押して

います。旦那は”右だ”、”左だ”と命令口調で奥さんに指示しています。
あたしゃ、その姿を見て車椅子を蹴っ飛ばしたくなりました。まるで召使扱
いです。すれ違いざまに大きな声で”奥さん大変ですね”と声をかけました。
”はい、ありがとうございます、もう限界です”と小さな声が返ってきました。
つぎの日もおなじようなコースを徘徊してありました。昼間、病棟の診察室
の外側の椅子に見覚えのある奥さんの姿がありました。私もつられたよう
に隣りに座りました。そうして”毎日大変ですね、まだ、しばらくかかりそう

ですか”と声をかけました。すると奥さんは”はい実はいま、放射線の治療
をやっているんですが、段々効いてきて、病院から”ウチでお世話できる範
囲を超える状態になりましたので、どなたか身内の方でお世話をお願いし
ます”と連絡があり、もう10日ほどになりますが主人のベッドの横にレンタ
ルの簡易ベッドで寝起きしながら看ています”ということでした。そうして庇う
ように”主人は大人しいひとで普段は手のかからない優しいひとなんですが
抗がん剤と放射線の治療をうけるようになってから、ひとがかわったように

荒々しくなって、大声を出したり病院でも手に負えなくなって、ひとりでは、な
にをするか、どこへいくかわからない状態になったので私が世話をしている
んです。このままでは主人はどうなるか心配でお医者さんに相談しましたら
本来、35回の放射線の治療は完遂しなければなりませんが、この状態で
は主人に耐えるだけの体力がないといわれ、30回で中止ということになり
ました。そりゃあ、35回やったほうがいいに決まっていますが主人がおかし
くなってしまっては元も子もありませんからねえ”とため息混じりで話してあり

ました。劇薬と闘ってある方の生々しい姿でした。そういえば、いつでしたか
ね、私はアイマスクをつけて休むんですが、深夜ひとの気配がしましたので
マスクをはずしましたら、ベッドの横におっさんが立っているじゃありません
か、あたしゃ、びっくりして”ここは〇〇号室ですよ”といいましたら首をかし
げたまま、ウンともスンともいわずに消えていきました。ボケなのか劇薬の
仕業なのかわかりませんが、ひとの判断力まで悪さをするということが知ら
された事件ではありました。でもねえ現代医学ではこれらに頼らざるをえな
いのが現状です。ねえ近藤センセ(慶応義塾大学講師)。
          劇薬はひとの判断力や人格までかえてしまいます
            これからの出前は要注意で~す ぐっさんハイ