入院している方は様々です。お金持ちだけでなく、ほどほどの方々も。美形
だけでなく、それらしい相応な方々も。お年の方もヤングでも。男も女も病と
いうものは関係なく襲いかかってきます。私が印象に残ったのは10歳ぐら
いの女の子でした。丸坊主にされた頭には大きなメスがはいったのがはっ
きりわかるような大手術をした女の子が車椅子に乗って面会室で談笑して
いました。大人たちは”頑張って、もうすこしで退院よ”と無邪気に激励して
います。その女の子は無表情で大人みたいな醒めた表情です。世の中じゃ

やれ、いじめだの体罰と手を差し伸べる話が真っ盛りですが、彼女には縁
のない話なんです。自分ひとりで痛みや苦しさ、辛さに堪えて病魔と闘って
いるんです。あたしなんか「一喜一憂」しながら一日中、怯えて過ごしていま
したが、その無表情な女の子は一体どんな思いで毎日病魔と立ち向かって
いるんでしょうか。醒めた目、表情はわずか10年ぐらいで何十年もの苦渋
を味あわされた大人びた表情に私は目をそらしてしまいました。そんなある
日、据わったソファーの端のほうから”あんた、どんな病気で入院したと”と

声がしました。声のかかったほうをみましたら80代とおぼしき男性が私を
みていました。”ハイ、首の横の腫瘍を切除しました”といいましたら”ほう、
ほかには、”といいますから”ほかにはありませんがこれから放射線と抗が
ん剤の治療をうけることになります”とこたえましたら”そうね、よかったね、
オレは膀胱ガンになり、手術をしたらオチン〇ンをとられるといわれたけん
ホルモン注射で治そうとしたらうまいこといかんで胃に転移して、それから
食道もやられたと”とニコニコしながら他人事みたいにいわれます。聞けば

3年越しに出たりはいったりをくりかえしているといわれました。悠々迫らず
という言葉が適当かどうかしりませんが、まるで仙人みたいに達観したその
御仁が大きく見えました。その方のお話では入退院をくりかえす常連さんは
結構いらっしゃるそうで、その御仁の目には怯え悩んでいる私を見かねて
声をかけていただいたと思います。いろんな患者をみたその方は激励した
かったんだと思います。それにしても人間という生物は簡単にはへこたれな
いものだと意を強くさせられた出会いでありました。大病で悩んでいる方、
一度、病室をのぞいてご覧なさい今流行の勇気とか元気っていう奴がもら
えるはずですよ。
       
安っぽく”頑張れ”とか”勇気をもらった”だなんて
        病棟ではいわないでください    ぐっさんハイ