入院して、まず感じたことは病院によっても異なると思いますが、4人部屋
なんですが昼間からカーテンで仕切られているんです。数年まえまでは、
おしゃべりで花盛りという感じでしたが隔世の感がありますねえ。その点、
レディの部屋はカーテンが開いて退屈しのぎでおしゃべりに花が咲いてい
るようでした。女性は気取りがないというか、肩に力がはいっていない生き
方を垣間見た思いでした。さて、これから活動拠点になる場所を探索して、
ベッドに戻りましたら隣りの方から”00といいます、よろしかったらデール

ームで、すこし話をしませんか”と誘いがありました。暇を持て余している私
は異存があるわけでもなく別室に向かいました。その方は入院して3ヶ月半
喉頭がんで手術をすれば声を失ってしまう。声が出なくなるより死んだほう
がましだ、という結論を出したと一気に話をされました。奥さんを2年まえに
亡くされて76になり、ひとり身でもありワケあって長男のくせに故郷を飛び
出して極道した報いをうけたと自虐気味に語ってありました。まだ数時間も
たっていない私が聞いてもいいのかという深刻な内容でした。たったひとり

で悩みぬき、だれかに聞いてもらいたいといった風情でした。私は命を助け
てもらいたい、なんとかして助かりたいという思いで入院したのですが、この
方は声を失うぐらいなら死んだほうがいいという覚悟を決めてガンと共生し
ていこうとされる潔さに、言葉もありませんでした。実は前立腺ガンの摘出
手術をうけたときの先生が”なにも手術することだけがすべてではありませ
ん、自分の寿命とガンの進行具合で、共生する生き方を考えることだって
選択肢のひとつです”という言葉を思い出してしまったその方の決断でした

医師からは、手術をしてできるだけ延命しようと説得されたそうですが、そ
れを振り切って社会復帰をするという決断をされたその方が侍みたいに思
えてなりませんでした。そうして数日後、だれの出迎えもみえない中、借家
住まいを清算して兄弟が待つ故郷のGに帰るといいながら静かに退院して
いかれました。いやあ、実際に生々しい生きざまに遭遇してみますと自分の
軽薄さと日頃なにも考えず、無茶をして親からいただいた体を痛めて健康
の有難さを思い知らされた人間ドラマでありました。
       
こうしてキーを叩ける自由さを噛み締めています ぐっさんハイ