短い台詞を感情豊かに口にする健さんは80を過ぎても我々の永遠のヒー
ローです。短い台詞といえばを鶴のひと声みたいに、かん高く発した名優
大滝秀治さんは健さんと競演した「あなたへ」が遺作となってしまいました。
味のある役者さんでした。なんどでもいいますがアチラでは名監督・名優が
沢山、逝かれて、さぞかし垂涎の名画が続々と制作されていることでしょう。
さて、我らが健さんはNHKのインタビューでも”もっと(映画に)出たい”と抱
負を語っていましたから、またすぐスクーリンでお目にかかれることでしょう。

さて、ある作家が健さんとのインタビューで印象に残った話が、まだありま
したのでお届けさせていただきます。「さすがプロだといえるエピソードなん
ですが「四十七人の刺客」に出たときは、ひさしぶりの時代劇とあって1ヶ月
間、合宿し、かつらをかぶり刀を差す生活に慣れてから撮影にはいったと
いいます。「俳優高倉健」の演技について訊ねると、ほとんどが「人間高倉
健」について感想を返すという著者の指摘が面白いといいます。「四十七人
の刺客」で共演した宇崎竜童が語る撮影風景は象徴的だ。高倉の迫真の

演技に感極まって泣いてしまった宇崎は撮影のやり直しも重なり、いざ自分
が泣く場面で涙が出なくなってしまった。すると自分の出番が終わったあと
も撮影を見守っていた高倉が、宇崎の背後からおなじ台詞を心をこめて語
って助け、礼をいう暇もなく姿を消した。ある広告プロデューサーは高倉健
と話していると、普通のおじさんとしゃべっているように感じるという。自然体
で普通で、どんなひとに対してもおなじように接することができるからだ」。
優れた映画はみるひとの「ボディを打つ」と高倉は表現する。高倉の肉声に

もまたボディを打つ力がある。因みにこの、「四十七人の刺客」は、94年
東宝製作の時代劇映画。原作は池宮彰一郎の小説『四十七人の刺客』。
「日本映画誕生100周年記念作品」として東宝の威信を賭けた作品であった
ストーリーは己の権勢を誇示するために浅野内匠頭に切腹を命じ、赤穂藩
を取り潰した幕府を仇討ちによって、その面目を叩き潰そうと目論む、大石
内蔵助。吉良上野介をそれから守ることによって幕府の権勢を維持しようと
する米沢藩江戸家老・色部又四郎。この二人の謀略戦と大石と一文字屋

の娘・かるとの恋を中心にした『忠臣蔵』を描いている。大石内蔵助を高倉健
仇役・色部又四郎に中井貴一。そうして堀部安兵衛を宇崎竜童。かるを宮沢
りえが花を添えた力作でありました。それが縁で宇崎は高倉健の虜になって
しまい、最新作「あなたへ」の撮影現場に陣中見舞いにいってNHKのカメラ
に向かって”健さん、これ今でも大切にしています”と腕にしていた高級時計
を指で示しながら会話していました。スタッフのひとりが、”ワー高い時計だ、
100万はするな”と、おどろきの声をあげていましたっけ。共演者のひとりで
ある三国連太郎の息子、佐藤浩市は不動の姿勢で対面していました。

      『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』  ぐっさんハイ