天野祐吉と中村メイコが対談していました。勿論、「深夜便」でのことです。
天野氏がいうには楽隠居という存在は江戸時代には多く存続した庶民の
ご意見番であり相談役というチエ袋として広く世の中で敬意を払われた存
在でした。尊敬されていたからといって立派な人格者かと思いきや結構、
現役のころは失敗をかさねたり、カミサンを泣かせたり鼻つまみになりか
けた御仁もあったようですが、本人の自覚や伴走者(女房)の誘導のおか
げで真人間になったという世の中の雑事に長けたご老体が「生きた教育者」

として若者の憧れのひとになっていました。私もガキのころ年老いた車引き
のおっさんでしたが、暇なときはガキを集めて遊郭(女と男の化かし合いの
場)の話を面白おかしく話してくれたり妾の家に旦那を送っていったら先客が
いて盗人呼ばわりしながら、ご贔屓の旦那と一緒に叩き出したとか、まるで
落語の世界のような大人の世界を解説してくれた御仁がいたことを思い出し
ます。今のせちがらい時代には絶滅してしまった、妖しげな存在がご隠居と
呼ばれていました。前置きが長くなってしまいましたが、物心ついたころから

芸能界に生息していたメイコさんの話に耳を傾けてみることにいたしましょう
”あたし、神津善行と一緒になってつくずく思うのは男って、なんで外ではあれ
だけ気を遣うのに家に帰ったら、まるで燃え尽きた抜け殻みたいになって、
モノをいうのも億劫になるのか不思議だわ、そのうえ不機嫌で怒りっぽくなる
んですもの、ヤになっちゃう”。天野ご隠居曰く”それは男は外には七人の敵
がいるっていうじゃない、家に帰ってきたときぐらいリラックスしたいのよ”。
メイコ”そうかしら、すこしぐらい(エネルギーを)残しておいてほしいわ、家に

帰ったら風呂、飯、寝る、、でしょ。たまに話をすると小難しい話でしょ。でも
ね、あたしイヤな顔はしないの、真面目に聞いていると肩が凝るから台所な
んかで”ああそう、本当?”と合槌を打つの。でも、それだけじゃ聞いていない
と思われるから、ときどき”ウソ!”っていうの。すると旦那はムキになって”ウ
ソじゃないよ!”といって、また難解な話を再開するのよ。そんな風にして対話
を重ねていくの、そうして段々、身近な話題に誘導していくのよ”。ご隠居”い
やあ、参ったな。メイコさんの思慮深い陰謀に神津さんは引っ張り込まれて、

いくんだ”。メイコ”そうじゃないけど男って家では口をきくのも損をするってい
う動物だし、神津も年でしょ。ですから私が先立ったら今のままだと孤独死に
なりかねないでしょ。ですから料理とか温めるのに重宝なレンジなんかも、わ
ざと間違えて”ねえ、これってどうしたらいい?”って神津にやらせるの、神津

は”なんだそんなことをできねえのか”って叱りますけど、”じゃ、あなたこれか
らは手伝ってください”っていいながらレパートリーを広げていくの、大変よ”。
まだ、いろいろありましたが、我が家のこととダブってしまい、寝たふりをして
しまいました。


     
       男は見た目で”勝った負けた”を判断する。女は敵を
       手元に引き寄せて吟味して判断する  ぐっさんハイ